(※写真はイメージです/PIXTA)
2割の高齢者が「エアコンの使用」に消極的
株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護が、65歳以上の高齢者と、親と離れて暮らす40~50代を対象に実施した『熱中症予防に対する意識調査』によると、8割以上の高齢者が熱中症にならないよう気をつけていると回答し、子世代の6割以上も離れて暮らす親の熱中症が心配だと答えました。
一方で、親世代に例年の夏時期のエアコンの使用状況を尋ねたところ、最も多かったのは「暑いと感じた時にすぐ使用している」(42.9%)。「ほとんど一日中使用している」(24.5%)、「昼間だけ、夜間だけなど時間を決め使用している」(12.2%)を合わせると79.6%でした。しかし「なるべく使用しないようにしている」(13.5%)、「使用していない」(2.8%)を合わせると、約2割はエアコンの使用に消極的であることがわかります。
また「今年のエアコン使用を例年より控えたい」と回答した人にその理由を聞いたところ、最も多かった回答は「物価高などの影響で生活費がかかりすぎているため」で58.1%。物価高がエアコンの使用にも影響を及ぼしています。
「エアコンを使わないで我慢していたら命があぶないだろう。なんで何も言わないんだよ」
「だって、お前も給与が上がらない、上がらないってボヤいていたじゃない。そんな余裕、ないんだろう?」
確かに、以前帰省したとき、お酒が入っていたこともあり、ポロリと愚痴をこぼしたことがありました。隆志さんの月収は45万円ほどと、大卒サラリーマンの平均といったところ。住宅ローンの返済や教育費と、昇給のスピード以上に支出が膨らむスピードが早いなか、さらに物価高も直撃。正直な話をすると、万一、真知子さんから支援を求められても、2つ返事で承諾できるほどの余裕はありません。真知子さんも、そのような状況を知っていたからでしょう。常に電話の向こうでは、「大丈夫よ」「元気よ」を繰り返していました。
それでも母の苦境を目の当たりにした今、何もしないわけにはいきません。
「かあさん、本当にごめん。大変だということに気づいてあげられなくて」
隆志さんはすぐに実家のある市のホームページを開きました。「高齢者」「支援」「電気代」……いくつかのキーワードで検索すると、熱中症対策として、一定の条件下でエアコンの購入・設置費用や電気代を助成する制度があることを見つけました。すべての自治体にあるわけではありませんが、探してみる価値はありそうです。
「夏の間のエアコン代くらいなら、俺が出すよ。月1万円でもあれば、少しは気兼ねなく使えるだろ?」
月収45万円から1万円の捻出は、決して楽ではありません。しかし、母の命には代えられません。「節約」か「健康」か――。猛暑が続く現代において、多くの高齢者がこの厳しい選択を迫られています。ひと際厳しい暑さが続く今年の夏。「部屋の温度は何度?」、実家への一本の電話が、親の命を守るきっかけになるかもしれません。
[参考資料]
消防庁『救急搬送状況』
内閣府『令和7年版高齢社会白書』
株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『LIFULL 介護が高齢の親と、親と離れて暮らす子を対象に熱中症予防に対する意識調査を実施』