多くの人が直面する、親の介護問題。自宅での介護に限界を迎えたとき、「施設に預ければ解決!」という単純な話ではなく、費用や対応力、本人の適応など、現実は複雑のようです。
もう限界です…〈年金18万円〉の74歳義父を「月額22万円の老人ホーム」に入居させた52歳嫁の絶望。わずか3ヵ月で義父が自宅に帰ってきた日 (※写真はイメージです/PIXTA)

★予算以上の費用と引き換えに手にした平穏

「お義父さん、帰りましょう」 3ヵ月前、安堵感と少しの罪悪感を抱きながら有料老人ホームに預けた義父、田中正雄さん(74歳・仮名)。今日、由美子さん(52歳・仮名)は夫の浩一さん(55歳・仮名)と共に、退去する義父を迎えに来ていました。助手席から後部座席の義父へ努めて明るく声をかけますが、運転席の夫は固く口を結んだまま前を見つめています。

 

数年前に義母を亡くし、義実家で一人暮らしをしていた正雄さん。しかし、ここ1年で認知症の症状が目に見えて進行しました。同じものを何度も買ってくる、薬を飲んだか忘れてしまうといったことから始まり、やがて深夜に目的もなく外を徘徊し、警察に保護されることも一度や二度ではありませんでした。

 

「長男の嫁なのだから」 誰に言われたわけでもありません。しかし、仕事で多忙な夫を支え、パートをしながら家計を切り盛りしてきた由美子さんには、周囲からの無言のプレッシャーが重くのしかかります。週末ごとに夫の実家に通い、身の回りの世話をする「通い介護」を始めましたが、平日の様子が気になって眠れない夜が続きました。介護生活をスタートさせて1年。心身ともに、限界はすぐそこまで迫っていたのです。

 

夫婦で何度も話し合った末、出した結論が「老人ホームへの入居」でした。浩一さんのきょうだいたちは、金銭的な負担が及ばなければ別に問題ないというスタンス。正雄さんの年金は月額18万円ほど。貯蓄を鑑みると、月々の利用料が約20万円が上限です。

 

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』によると、入居した老人ホームの月額費用は「10万円台」が最多で33.6%。「20万円台」(27.3%)、「30万円台」(13.6%)と続きます。また金額と立地以外で重視したものとして「スタッフの質や雰囲気」が32.4%と最多。「すぐに入居できるか」32.2%、「医療体制」(28.2%)、「室内の清潔さ」(25.1%)、「入居者の雰囲気」(24.2%)と続きました。

 

田中さん夫婦が見つけた施設は、義実家から車で30分、田中夫婦の自宅からも45分ほどの距離にある介護付有料老人ホーム。月額費用は22万円と、予算を超えるものでしたが、スタッフの対応がよく、何よりも即入居可能であることで即決したといいます。