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往復だけで30万円超…恐怖の年末年始
「ケンイチ、今年のお正月はどうするの? お父さんもみんなの顔が見たいって張り切っててさ。カニ、注文しちゃっていいかな」
11月半ば、スマートフォンのスピーカーから響く母親の明るい声。都内の中堅企業に勤める田中健一さん(44歳・仮名)は、曖昧な返事を濁して通話を切ると、深いため息をついたといいます。
「カニなんていわれても、何のテンションもあがりませんよ」
田中さんの実家は北海道・札幌。現在は都内の賃貸マンションで、妻、高校2年生の長男、中学2年生の長女、中学1年生の次男と5人で暮らしています。
月収は額面で約45万円。手取りにすると35万円ほどです。子どもたちの成長とともに食費と教育費が膨れ上がり、妻・陽子さん(仮名・43歳)のパート収入を合わせても、毎月の収支はカツカツだといいます。「まさに毎月が自転車操業ですよ」と苦笑いの田中さん。そんな状況のなかでの「年末年始の帰省要請」……やはり痛すぎます。
「年末に5人家族で羽田と新千歳を往復する。子どもたちもみな大人料金ですから……ほんと、この時期に帰省するのは一大事ですよ」
田中さんが恐る恐る予約サイトを開き、航空券の手配を始めます。 まず往路。一番安い便は満席で取ることができず、朝一番の便で予約。大人5人で12万円。 次に復路。どうやら行きは日にちが分散されるようですが、帰りは日付が集中しています。空席のある一番安い便で予約し、大人5人で21万円。
「30万円を超えました……1ヵ月分の手取りがほとんどなくなりましたよ」
帰省にかかるお金はそれだけではありません。空港からの移動費、実家へのお土産、親戚の子どもたちへのお年玉……。現地でレンタカーでも借りようものなら、総額50万円を超えます。 妻・陽子さんは「年に数えるほどしか会えないんだから、仕方がないわよ」と言ってくれますが、それでも電卓を叩いてしまう自分がいるそうです。
「親も80近いですから……あと何回会えるかわからないと思うと、『お金がないから行けない』とは口が裂けても言えません。それにしても帰省って、こんなに命がけのものでしたっけ?」
久々の団欒は、あまりにも高くつきました。