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「合格おめでとう」の言葉とは裏腹に、頭の中で弾いてしまった“そろばん”
地方・メーカー勤務の里田隆志さん(52歳・仮名)。昨年の受験シーズンを振り返り、複雑な“受験生の親”の心境を教えてくれました。昨年、大学受験に臨んだのは長男の翔太さん。地元の国立大学を受験しつつ、本命は東京の私大だったといいます。
「地元での進学先といえば国公立が基本で、私立大学は限られています。だから滑り止め含めて、東京など、地元以外の私大も受験する子が多いのではないでしょうか。うちの長男の場合、東京への憧れが強く、第一志望は東京の私大。偏差値は70を超える大学だったので、『頑張れ!』と応援しつつ、心の中では記念受験だと考えていて、親としては地元の国立大学が本命だと……」
しかし、翔太さんの努力は見事実ります。「受かった!」とリビングに響いた翔太さんの弾んだ声。スマートフォンに表示された「合格」の二文字を見た瞬間、里田さんは「おめでとう、よく頑張ったな」と笑顔で称えたといいます。
「国立の二次試験の1週間くらい前だったか、長男の第一志望の大学の合格発表は。もう、国立大学を受ける理由もなくなってしまって」
口では「おめでとう」といいながら、心の中では落胆している自分がいて、「心底自分が嫌になった」と里田さん。そのような気分になったのは、やはりお金のことでした。
「改めてそろばん勘定をしてしまって。もし国立大学に進学してくれたら、家から通うことができて、学費は4年で250万円ほど。それが息子が進学した大学では倍になる。さらに上京しなければならないから仕送りもあるでしょう。月10万円の仕送りだとしたら、4年で500万円近くになる。地元の国立大に進学できていたら、700万円以上の差ですよ。再来年には次男も大学受験を控えているし……私の年収は600万円ほどで、最近は上がる気配もない。そろそろ自分たちの老後も真剣に考えないといけない。ナーバスになるのも無理はないですよ」
息子の合格を100%の気持ちで喜べない――本当にダメな親ですと卑下する里田さん。
「憧れの大学で憧れの東京暮らしができる。進学した大学なら、就職でも有利でしょう。息子の将来を考えても、地元の国立大学に行くより良かったはず……そう言い聞かせています」