大学生活は、学業に励み、友人との交流を深め、将来への準備を進める貴重な期間です。しかし、本来の目的から外れてしまうと、学生本人だけでなく、家計を支える保護者にとっても頭の痛い問題が起こり得ます。本記事ではAさんの事例とともに、我が子の大学進学で起こり得るトラブルについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
大バカ野郎!年収400万円の53歳会社員父、東京私大に通う息子が“大企業・就職内定”で大喜び→半年後、号泣する息子から電話が…。「まさかのひと言」に大激怒【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

アルバイトに力を入れすぎた一人息子

父親想いのAさんの息子は、父親がかなり無理をして仕送りをしてくれることを知っていました。やがて大手企業への就職内定を早々にもらった息子は、アルバイトのシフトを増やし、「仕送りは少し減っても大丈夫だよ」と親を安心させます。

 

Aさん夫婦は、優しくて優秀な息子に大喜び。「これで一安心だね。会社も来年はボーナスも例年どおりに戻るだろうし、この4年間は本当に大変だったから二人で温泉でも行こうか」と夫婦で話し合っていました。

 

しかし就職内定から半年後、息子から思いもよらぬ連絡が入ります。

 

「どうしよう……」泣きながら電話を寄こしたので、Aさんは慌てました。

 

「うっうっ、卒業に必要な単位が2単位足りなかったよ。卒業できないよ。内定も取り消しだよ。会社にどうやって説明しよう……」Aさんは唖然としましたが、我に返り、電話越しに息子を怒鳴りつけました。

 

「大バカ野郎! なにを考えているんだ! せっかくいい会社に内定をもらったって、なんの意味もないぞ! バカにもほどがある!」なだめる妻をよそに、怒りのまま息子を叱りました。息子はただただ泣くばかりです。

 

必死に頭を巡らせたAさんは、過去に同じような新入社員が自分の会社にいたことを思い出しました。

 

「そういえば、救済措置があってなんとか無事に卒業できた、とかいってたな。教務課や教授にすぐに相談してみなさい」と少し落ち着きを取り戻して息子に伝えました。Aさんはつい怒ってしまいましたが、息子が苦手な早起きを頑張って新聞配達や居酒屋のシフトを増やし、学費を自分でなんとかしようと家計を助けてくれたことを知っていたので、内心は複雑な気持ちでした。

 

しかしこれ以上、大学にお金がかかる留年は、親のAさんにとっても死活問題です。会社はなんとか持ち直しましたが、ここ数年の物価上昇は非常に厳しいものがあります。新年度からは学費が上がるのではないか、食費などさらに寮費も上がるのではないか、留年すると就職に影響が出るのではないか、と夫婦の心配は尽きません。

 

どうにか卒業できるようにと当時は祈るばかりでした。

単位不足の場合、どうなるか?

卒業に必要な単位が不足している場合、原則として卒業はできません。ただし、大学によっては「春学期の再履修」や「特別措置」があることもあるので、すぐに教務課に相談することをお勧めします。不足しているのが必修科目か選択科目かにもよりますが、選択科目であれば、代替科目で対応できる可能性もあります。

 

就職内定先には、卒業見込みでの採用前提になっている場合がほとんどでしょう。卒業できなかった場合は内定の保留や取り消しとなる可能性が大きいです。ただし、誠実に事情を説明することで入社時期の調整など柔軟に対応してくれる企業もあります。

 

教務課に状況を説明し、救済措置が取れるか早急に相談。就職先の人事担当に誠意をもって説明、卒業見込みが外れたこと、対応中であることを伝え、指示を仰ぐのが大切です。