日本の農業協同組合(JA)グループも、少子高齢化や流通構造の変化、そして若手職員の離職問題など、大きな転換期を迎えています。これは、かつて父・小泉純一郎氏が推し進めた郵政民営化に似た、小泉進次郎氏による農政改革が示唆するような、日本の根幹を支える組織のあり方そのものが問われている状況ともいえるでしょう。
結局は父親の真似事…小泉進次郎農相の発言で揺れる農協界隈。父と同じ「JA」を選んだ月収21万円・25歳息子の虚無感 (※写真はイメージです/PIXTA)

父と同じJAグループ

25歳独身のAさんは、JAグループに勤める職員です。同じくJAに勤めており、定年退職後は再雇用制度を利用し、嘱託職員として仕事を続けている62歳の父親とパート勤めの母親と同居しています。Aさんは二人兄弟の次男ですが、年の離れた34歳の会社員の兄は結婚して離れた土地に家を購入して妻と子ども2人の家族4人で暮らしています。

 

Aさんは、子どものころからJA職員である父親の姿を見て育ってきましたが、初めから希望して同じJA職員になったわけではありません。就活の際、いくつか民間企業の採用試験を受けたもののうまくいかず、母親の勧めで父と同じJAグループの採用試験を受け、この道が決まった次第です。

 

母親は仕事が決まったことを喜んでいましたが、Aさんはなにせ仕事を決めたかった一心だったため、やる気も起きないままこれまで過ごしてきたような状態です。

仕事を辞めたい…

父親の姿から、どんな仕事なのかはわかっているつもりでしたが、実際に就職してみると思った以上に大変でした。近年は退職者も多く、業務量も増えています。ですが、残業の割には給料も少なく感じます。Aさんの月収は約21万円です。

 

Aさんには最近好きな娘ができて、結婚したいと思うようになってきましたが、年収が低いことや仕事に対するモチベーションが上がらないために踏ん切りがつきません。特に最近は「米高騰」の問題で、友達からは「まだ勤めてるのかよ」「ショッカーじゃん」などと揶揄される始末です。

 

JAの事業は、金融・保険・物販・農業関連などがありますが、Aさんは共済(保険)のノルマを一番つらく感じています。勤めるJAによって違うのでしょうが、Aさんにとっては厳しく、3年間勤めてきてすでに限界がみえてきたようです。勤務する場所は違いますが、同じJA職員として定年退職まで勤め上げ、さらに再雇用制度で仕事を続けている父親を不思議に思えてきてしまいます。

 

「父親の真似事をしてみたけれど、なにも成し遂げられなかった」

 

さらにAさんは、年の離れた兄が海外出張などでバリバリ働いているのを見ると羨ましく感じ、「自分もなにかできるのではないか?」「人生をムダにしているのではないか?」と焦る日々を送っています。