日本企業と外資系企業にはさまざまな違いがありますが、その一つが、外資系企業では業界の外へ意識を向け、自身の考えを他人に共有できる「外界志向」が重要視されること。一方で、「根回し」と「気配り」ができる能力も欠かせないといいます。今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長・福留拓人氏が、外資系企業と日本企業を比較しながら、これからの時代にビジネスパーソンが持つべき意識について解説します。
外資系では“強み”なのに日本企業では“雑音”扱いの「外界志向」…大企業にありがちな“内向き志向”が衰退をもたらす理由【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「時は金なり」を体現する外資系トップ

外資系企業のトップクラスの人たちは「1時間あたりいくらの収益責任を負っているか」という意識を明確に持って仕事をしています。ですから仕事で時間を使ったのに成果がないということは、明日の食事に困るという感覚を持って仕事をしています。それだけプロ意識が高い、いわば「狩猟民族」なのです。

 

私たち日本人も、仕事の時間に対して「時給〇万円」という意識を持つべきです。問題意識の低い相手と会って時間を浪費したら、その分はどこかでまた穴埋めしなくてはならなくなります。外資系企業のトップ層には無駄がなく、非常に効率を重視します。「時は金なり」ということわざがありますが、まさにそうあるべきなのです。

日本独自の「外界志向」を企業の強みに

最後に強調しておきたいのは、欧米の価値観を全面的に崇拝すべきだと言っているのではないということです。以前、人事評価制度に言及したコラムでも触れましたが、「謙虚に外から学ぶ姿勢」は非常に大事です。とはいえ、新しい考え方に慣れるには時間がかかります。筋トレと同じで、最初は苦痛に感じることもあるでしょう。

 

それでも、外の世界や自分に見えていないものを意識しながら、真剣に10年ほど取り組んでみる。そこで得た知見を、日本独自の強み――メンタリティや温かさ、朗らかさ――と融合させて、加工貿易のようにオリジナルの価値を創り出すことが重要です。

 

一方で、「自分たちには関係ない」とばかりに外の情報に目を背け、耳をふさいでしまう姿勢は、停滞ではなく衰退につながります。

 

今回ご紹介した内容は、外資系に勤めていない人にとっては耳が痛いかもしれません。しかし、こうした価値観で高い成果を出しているビジネスパーソンが数多く存在するということを、ぜひ一つの刺激として受け取っていただければと思います。

 

最後に、読者のみなさまも、「根回し」と「気配り」という古くて新しいコミュニケーションの価値を、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長