ここまではあくまで架空のゲーム。現実の投資は…
「まあでも、所詮サイコロの話でしょ?」と思った方もいるかもしれません。
ごもっともなご指摘です。ただ、この話は決して“机上の空論”ではありません。
次に紹介するのは、米国株式市場(インデックス)の実際の年次リターンの分布です。米ドルベースで、配当は考慮していないデータですが、先ほどのサイコロゲームの分布と見比べてみましょう。
サイコロゲームで得られた1000年分の仮想データに比べれば、当然ながらサンプル数は少なく(100年にも満たない)、分布もやや“ガタつき”があります。
それでも、全体的な形は意外なほど似ています。
平均リターンに注目すると、実データの米国株式のほうが、サイコロゲームよりもわずかに高いリターンを示しています(米国株式の方が分布がうっすら右寄り)。同時に、リターンのばらつき(=分散)も大きいです。実データの分布は、サイコロのそれよりも少し広がっています。
誤解しないでいただきたいのは、「投資はただの運ゲー」と言いたいわけではありません。現実の投資を無理やりサイコロで単純化したら、図表1のようなルールで似せられる──というのがここでのポイントです。
つまり、6ヵ月に1度くらい月間-6%の下落があったとしても、まったく珍しいことではないどころか、むしろそれくらいの変動は確率的にもいたって普通とすらいえるでしょう。そして年間で-20%や+30%というリターンがあっても、まあまあよくある範囲ということも分かります。
ここで、冒頭に登場したスピリチュアル系投資家の発言を思い出してみてください。
「●●になったら絶対に下がる(or上がる)」
こうした言葉が、どれだけ滑稽に響くか、おわかりいただけるのではないでしょうか。
サイコロゲームにたとえると「やっぱり1が出ると思ってた」「3以上が3回続けば次は1が出る」……これが筆者が彼らのことを“スピリチュアル系”と表現する理由です。
投資とは、本質的にブレがあるものです。下がる年もあれば、上がる年もある。数年単位で結果がぶれるのは、まったくもって普通です。
もし、友人とすごろくで遊んでいて、サイコロを3回連続で1を出してしまった人が「やっぱり次も1が出ると思ってたんだよね〜」なんて言ってきたら、思わずふふっと笑っておしまいです。
でも、いい歳した大人が専門家気どりで、真顔でそれを語っていたら──
それはもう、頭を抱えるしかありません。