絶対は、絶対にない。
忘れてはいけないのは、投資の結果に「絶対」は存在しないということです。必ずプラスになることも、必ずマイナスになることもありません。最近資産運用を始めて、2025年の株価の下落に驚いた方もいるかもしれませんが、「未来は不確実なものだ」という大前提を、どうか胸に留めておいてください。
このあたりまえのようで忘れがちな不確実性を、少しでも実感していただくために、ここで小さな実験をしてみましょう。
身近な“運任せ”といえば、やはりサイコロです。今回は、このサイコロを使って、出た目によって資産の値動きが決まるような、シンプルなゲームを想像してみましょう。投資の不確実性を体験するための運試しゲームです。
ルールはとてもシンプルです。月に一度サイコロを振るだけ。なおこのゲームの期待値(収益率の単純平均)は月あたりおおよそ+0.5%。つまり、平均的には毎月少しずつ資産が増えていく仕組みとします。
たとえば年初に100万円からスタートして、1月に「6」が出たら資産は106万円に。2月に「2」が出たら102万8,000円に。3月に「4」が出れば104万9,000円……といった具合に、出目に応じて資産が増えたり減ったりしていきます。
「絶対やるに決まってるでしょ!」と思った方は、ぜひこの文章を最後までお読みください。「うーん、ちょっと嫌だな……」と感じた方は、もしかしたら無理に投資やNISAに取り組む必要はないかもしれません。実際の資産運用はこのゲーム以上に不確実なことがあります。
もちろん、現実の投資はここまで単純ではありません。けれど、ここではあえて厳密な話を横に置いて、まずは感覚として「不確実性」を体験してみることを優先してみましょう。
では、このサイコロゲームをコンピュータ上でシミュレーションして、試しに“1000年分”(つまり12,000回サイコロを振る)ほど遊んでみたとき、どんな結果が得られるでしょうか?
こちらが、先ほどのゲームを1000年分プレイして得られた「各年におけるリターン」の出現頻度分布です。
この結果を見て、皆さんはどう感じましたか?
おそらく、多くの人がサイコロゲームのルールを見て最初に感じた以上に「年単位のリターンって、こんなにブレるのか」と感じられたのではないでしょうか。もっとも頻出したのは、年率で+0〜+10%の範囲。これは、サイコロゲームの期待値が月+0.5%、理論上は年+6.2%と見込まれることを考えれば、違和感のないことです。
しかしそれ以外にも、プラス30%以上になる年もあれば、マイナス20%以下になる年も多く生じているのがわかります。1000年分のプレイのうち、実に361年分は「資産が減った年」でした。
1000年分の記録をより詳しく見てみると、最長で5年連続マイナスになったケースもありました。あるいは直近の最高値から最大60%下落した局面も記録されています(このような「直近のピークからどれだけ下がったか」を表すのが、いわゆる「ドローダウン」と呼ばれる指標です)。
サイコロのような単純なルールでも、これだけのブレがある──これは意外だったのではないでしょうか? 月単位では比較的穏やかな変動にみえても、それを1000年続けてみると、さまざまな事象が起こり得るということが分かります。
いかに期待値としてはプラスとはいえ、年単位でみれば普通にマイナスの年もあれば、資産の半分が無くなる局面もあるということです。