(※写真はイメージです/PIXTA)
自分の仕事をきちんと他人に説明できますか?
このコラムでは以前から「キャリアの棚卸し」というキーワードを使い、さまざまな視点でお話をしてきました。老若男女を問わず、キャリアのレベルや年齢、ポストの高低にかかわらず、自分自身を等身大で見つめ直す「棚卸し」は、言うまでもなく誰にとっても欠かせない作業です。
特にエグゼクティブに近いポジションにいる人は、「自分のキャリアを等身大で語らなければならない場面」がやってきます。ある程度年齢を重ね、実績も積み重なっているからこそ、若手よりもさらにシビアかつ冷静に、自分のキャリアを説明できなければなりません。
面接で与えられる時間は年齢がいくつでもほぼ同じです。過去の職歴をダラダラと語れば、成功の期待感はぐっと下がってしまいます。大切なのは、「原点回帰」と「基本への忠実さ」。とくにエグゼクティブポジションを経験してきた方ほど、自身の実績や仕事の中身を、客観的かつ簡潔に伝えるスキルが求められます。
自身の実績について語ることの難しさ
自分の仕事ぶり、実績について語る。そんなのは当たり前じゃないかと思われるかもしれません。しかし、実際にきちんと語れる人は、私の感覚では100人中10人ほどしかいません。
簡単そうなのに、誰もができるわけではないのはなぜか。「自分には何ができるのか?」「仕事の中で一番苦労したことは何か?」と問われたとき、即座に答えられる人が極端に少ないのです。「実はこういう経験があって……」と1秒以内に話し出せる人と、「うーん……」と前置きを入れてしまう人。これが、「語れる人」と「語れない人」の分かれ目です。
トップレベルの人は、常に即答できます。なぜなら、彼らにとって仕事の経験は“自分の言葉で語れる体験”として、深く根付いているからです。心理学的にも、真に身についた経験は忘れません。優れた人ほど、成果を出した場面を鮮明に記憶し、人に共有する力にも長けています。
こんなエピソードがあります。たとえば「私は人事のキャリアで海外に駐在していたことがあります。英語もできます」と言うので会ってみたら「アメリカにいたといっても現地採用には携わっていません。ただ見ていただけです」とのことでした。
これでは話になりませんが、こうした誇張がレジュメや最初のインタビューで平気で語られていることが、実際にあるのです。もちろん虚偽はすぐに見抜かれます。