長年連れ添った夫婦が定年を迎え、これからのセカンドライフを謳歌しようとするとき、これまでみえなかった「お金の問題」が表面化することがあります。特に、配偶者の一方に家計管理を任せきりにしている夫婦は要注意です。本記事は山崎さん(仮名)の事例とともに、夫婦間のお金に関するコミュニケーションの重要性について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
怒らないで聞いてね…「退職金2,500万円」「年金月32万円」65歳元サラリーマン、定年退職日の夕食時に明らかな異変。両手がガタガタ、顔面硬直60歳パート妻の〈衝撃告白〉大激震の夜【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

隠されていた借金と崩れ去る老後生活

明美さんが、ぽつりぽつりと話し始めました。パート先の同僚と資産運用の話がはずみ、同僚に誘われて数年前からFXを始めた明美さん。はじめのうちは少額からでしたが、損失が出ても「取り返そう」という思いに駆り立てられ、やめられなくなってしまったそうです。損失は膨らみ続け、その穴埋めのために、明美さん自身の貯蓄をすべて使いました。金融機関の浩一さん名義の貯蓄からは700万円を使っています。消費者金融からの借り入れも50万円程度ある、とのこと。

 

結婚してから、家計管理は明美さんに任せきりでした。妻がそんな大金を使い、さらに借金までしているとは……。退職金2,500万円と貯蓄1,000万円は、これからの老後を暮らすための大切な資金です。医療費や介護費などに備えておかなければなりません。浩一さんは一瞬にして、老後を楽しむという気持ちにはなれなくなりました。

 

「老後資金のうちの700万円がすでにない、そのうえ借金の返済もしなければならないのか……」浩一さんは、混乱し感情が抑えきれず、思わず明美さんに大声をあげてしまいました。定年退職祝いの夕食どころではありません「だから、怒らないでねって……」。

FXの仕組み

妻の明美さんがのめり込んでしまった“FX”とは、どのような仕組みなのか簡単に紹介します。

 

FXは、日本語で「外国為替証拠金取引」といいます。FXは、日本円と米ドル、ユーロ、ポンドなど、2つの通貨を選んで、その通貨間の為替レートの変動がこれから「上がるか」、「下がるか」を予想して取引を行います。たとえば、円安になって為替レートが101円の方向に変動すると予想して取引をした場合の利益と損失は、下記図表1のようになります。

 

出所:筆者作成
[図表1]FXの仕組み レートが上がる(円安になる)と思ったら… 出所:筆者作成

 

円高になって為替レートが99円の方向に変動すると予想した場合は、下記図表2のようになります。

 

出所:筆者作成
[図表2]FXの仕組み レートが下がる(円高になる)と思ったら… 出所:筆者作成

 

また、それぞれの通貨には金利差があります。金利の高い通貨を買い、金利の安い通貨を売ると、金利差によって利益が発生します。保有しているあいだは原則毎日貯まり、収益を得ることが可能です。

 

FXは、あらかじめ資金(証拠金)を預けて取引を行います。証拠金と取引額の倍率は「レバレッジ〇〇倍」と表記され、最大25倍までの取引ができます。少ない資金でも大きな利益を得られる可能性がありますが、元本保証はなく、わずかな為替レートの変動でも大きな損失が生じる可能性も。証拠金を上回る損失を被ることを避けるために、自動ロスカット(強制決済)というルールがありますが、即座に対応できず、損失に繋がる場合も少なくありません。ハイリスクハイリターンな取引ですので、リスクを十分に理解して行うことが重要でしょう。