(※写真はイメージです/PIXTA)
夫はパイロット、妻は専業主婦、子どもはオール私立
都内のタワマンに住み、毎年恒例の海外旅行、有名私立大学に通う2人の子どもたち(長男22歳、長女20歳)。航空会社で航空機操縦士を務める森和彦さん(仮名/58歳)の生活は、誰もが羨む成功者の暮らしでした。年収は2,000万円、妻の幸子さん(仮名/56歳)は、専業主婦として家事や子育てのほとんどを担当し、家庭を切り盛りしていました。
しかし、傍目には華やかにみえる森さん家族の暮らしの影で、静かに「破産の時限爆弾」が時を刻みはじめていたことを、当時の彼は知る由もありません。
華やかな暮らしの影
異変の兆候は、妻がつけていた一冊の家計簿にありました。1円の差もないような正確な家計簿ではありませんが、ざっくりとした支出メモ。数年前、子どもたちの大学進学を機に始めたのです。そこに並ぶのは、高額な支出の数々でした。
新築で購入したタワマンの住宅ローンは、月に30万円。夫婦共通の趣味である旅行、体調管理を考えた高級食材、スポーツジム、ママ友とのランチなどで費用がかさみます。一番大きかったのは、子どもたちの教育費。長男、長女ともに幼稚園からオール私立で、大学は、工学部と法学部にそれぞれ進学しました。大学の学費は、年間300万円ほどかかっています。
「ずいぶん教育にお金をかけてきたな。でも、大学を無事卒業して、希望に叶う職業についてくれるなら、親の責任は果たしたことになるよな」「そうよね」月の3分の1は不在という仕事柄、久しぶりに帰宅した和彦さんは、幸子さんと一緒にそのメモを眺めていました。
年収が高いから、出費が多くても問題ない――。年収2,000万円という数字が、夫婦にそう信じ込ませていました。住宅ローンの繰上げ返済や子どもの教育費に追われ、ほとんど貯蓄が増えていないという事実から、目をそらすように。退職金3,500万円と企業年金だけが、漠然とした老後の生活の頼りです。