「日本は安全な国」と信じて疑わない人は多いかもしれません。しかし、最新の調査結果が突きつけたのは、そのイメージとは裏腹に、国民の4人に1人が何らかの犯罪被害に遭っているという現実です。しかも、その大半は警察に届け出られず、統計にも表れない「暗数」として社会の目から隠されていました。
「日本は治安が良い」は幻想か?日本人の4人に1人が犯罪被害に遭っている「衝撃事実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

治安「良い」は幻想か。16%が被害「あおり運転」と急増するカード詐欺の深刻実態

法務省『第6回犯罪被害実態(暗数)調査』は全国の16歳以上の男女約7,000人を対象にしたこの大規模調査で、警察が認知していない「暗数」となった犯罪を含め、国民が実際にどのような被害に遭っているかを明らかにするものです。その結果から、私たちの身近に潜む「見えない犯罪」のリアルな姿が見えてきました。

 

驚くべきことに、過去5年間で何らかの犯罪被害に遭った人は24.9%に上り、4人に1人が被害者となっている計算です。なかでも衝撃的なのは、今回から新たに調査項目に加わった「あおり運転」の被害率。過去5年間に自動車等を運転する世帯のうち、実に16.5%が被害に遭ったと回答しています。 これは調査対象となったすべての犯罪のなかで突出して高い数値です。多くのドライバーが、車間距離を詰められたり、幅寄せされたりといった危険な行為に日常的に晒されている実態がうかがえます。

 

さらに深刻なのは、その被害がほとんど表に出てこないことです。あおり運転の被害に遭った人のうち、警察に届け出た割合はわずか2.2%に過ぎません。 なぜ被害者は声を上げないのでしょうか。届け出なかった理由として最も多かったのは「それほど重大ではない(損失がない、大したことではない)」で75.8%を占めました。 しかし、「捜査機関は何もできない(証拠がない)」(12.9%)、「捜査機関は何もしてくれない」(7.9%)、「仕返しのおそれ」(6.3%)といった回答も無視できません。 これらの声は、立証の難しさや警察への不信感、そして報復への恐怖から、多くの被害者が泣き寝入りを余儀なくされているという厳しい現実を物語っています。

 

この「見えない犯罪」の蔓延は、人々の心にも影を落としています。我が国の治安について「良い」と回答した人の割合は前回調査から3.8ポイント低下し、逆に「悪い」と回答した人の割合は3.2ポイント上昇しました。 認知されている刑法犯の件数が減少傾向にある一方で、人々の「体感治安」はむしろ悪化しているのです。