(※写真はイメージです/PIXTA)
義実家への帰省で気づいた「夫の潜在意識」
年末年始の帰省シーズン。久しぶりの再会を喜ぶ声がある一方で、義実家というアウェイな環境で疲弊する妻(夫)たちの悲鳴も聞こえてきます。特に、生活習慣や親族間のルールが大きく異なる場合、そのストレスは計り知れません。
都内のメーカーで働く田中里美さん(32歳・仮名)。昨年の年末、結婚後初めての帰省で手痛い洗礼を受けたひとりです。
「夫とは職場の同期として出会い、結婚しました。交際期間は2年ありましたが、彼の実家が地方の旧家であることや、親戚付き合いの濃さまでは深く考えていなかったんです。それがそもそもの間違いでした」
当時の里美さんの月収は、約35万円。会社では中堅の域に足を踏み入れ、責任ある仕事も任されるようになり、毎日忙しくしていました。だからこそ、年末年始は「泥のように眠れる貴重な休息期間」だったのです。しかし、昨年末は夫・健二さん(32歳・仮名)の希望で、彼の実家へ2泊3日で帰省することになりました。
義実家には結婚の挨拶に訪れて以来、2度目の訪問。結婚式などはすべて東京で行ったため、夫・健二さんの地元を知ることのできる貴重な機会として、楽しみでもあったといいます。しかし12月30日の昼過ぎ、夫の実家に到着した里美さんを待っていたのは、ゆっくりとした団らんではなく、戦場のような台所でした。
「着いて早々、義母から『里美さん、エプロン持ってきた? さっそく始めましょうか』って。何が始まるのかと思ったら、おせち作りです。『うちは全部手作りが基本だから』と、大量の根菜や乾物を渡されました」
聞けば、元日には親戚一同、総勢30名以上が集まるとのこと。その全員分の食事を、義母と里美さん、そして近所に住む義姉の3人だけで用意するというのです。黒豆を煮て、伊達巻を焼き、大量の煮物の具材を切り続ける……。終わりの見えない作業は深夜まで続きました。
一方で、夫や義父、早めに集まっていた男性陣はどうしていたのでしょうか。
「彼らは居間で酒盛りです。『やっぱり母さんの味が一番だ』なんて笑い声が聞こえてくる。夫に助けを求めても、『ここはこういう家だから、頼むよ』と場を収めるだけ。昭和で時が止まっているのかと思いました」
大みそかの夜、ようやく作業が一段落したときには、日付が変わろうとしていました。疲れ果てて布団に入った里美さんの横で、夫はすでにお酒の匂いをさせて高いびきをかいています。
「あかぎれができかけた自分の手を見て、ため息しか出てきませんでした。『こういうところで生まれ育ったんだ』と、ぼんやり考えていたんですが、優しい夫の根底には『妻は家に尽くすもの』という意識があるんだろうなと思うと、えらい人と結婚してしまったと、後悔の気持ちが込み上げてきました」
翌朝、元日の宴会でも里美さんは配膳係として奔走。東京に戻る新幹線で「来年は絶対に帰らない」と心に誓ったそうです。