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「まさかここまでとは……」夫の定年で崩壊した妻の自由時間
「夫とは結婚してからずっと仲が良く、喧嘩らしい喧嘩もしたことがありませんでした。だから、定年後も上手くやっていけると思っていたのですが……現実は甘くありませんでした」
都内在住・パート勤務の田中洋子さん(仮名・57歳)。夫の健二さん(仮名・60歳)は、大手メーカーを定年退職したばかりです。現役時代は仕事人間で、家のことは洋子さんに任せきり。それでも真面目で優しい夫を、洋子さんは尊敬していました。しかし、その関係は健二さんの定年退職翌日から一変します。
「私がパートに出ようとすると、『何時に帰る?』『ご飯はどうする?』などと聞いてくるんです。最初は寂しいのかなと思って優しく答えていたんですが、次第に行動がエスカレートしていきました」
ある日、洋子さんが近所のスーパーへ買い物に行こうとすると、リビングでテレビを見ていた健二さんが立ち上がり、「僕も行くよ」と言い出しました。
荷物を持ってくれるなら助かる、と洋子さんは軽く考えていましたが、健二さんは鮮魚コーナーで「この刺身は色が悪い」と口を出したり、「今日食べるなら、こっちのほうが20%引きだよ」と言ったりなど、洋子さんのペースを完全に乱したのです。
極めつけは、美容院への同行でした。
「『美容院へ行く』と言ったら、『近くの本屋で待っているから一緒に行こう』って。終わって店を出たら、美容院のすぐ外で私を待っていたんです。美容師さんにも見られてしまって……本当に恥ずかしい」
洋子さんは当時を振り返り、自身の「認識の甘さ」を反省点として挙げます。
「私、夫の定年退職を『長い休暇の始まり』くらいにしか捉えていなかったんです。でも実際は、夫にとって会社を辞めるということは生活の大部分を占めていた居場所がなくなることなんですよね。仕事以外に何か趣味でもあればいいのですが、仕事が趣味のような人ですから……そりゃ、私に依存するのも当たり前ですよね」
定年前に、再雇用制度や地域の活動について、もっと二人で話し合っておくべきだったという洋子さん。
「夫にしてみたら、定年退職したら夫婦水入らずと思っていたのかもしれませんが、私の普段の生活にはほとんど夫はいません。そんなところに、急に夫がズカズカと入ってくるものだから、私としてもすごくストレスなんですよね……」