生活の土台を揺るがす「コメ高騰」。日々の食卓や家計に与える影響は、決して他人事ではありません。今、主食であるコメが手の届かない存在になりつつある現実が、私たちに問いかけるものとは。
2,000円の備蓄米に涙した76歳〈年金月10万円〉の現実。「来月も買える?」安堵の先に見えた〈底なしの不安〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

コメ高騰で「生きていくのもやっと…」

カレンダーに付けられた赤い丸印をみては、「まだか、まだか」と待ち望んでいるという田中千代子さん(仮名・76歳)。その日は2ヵ月に一度の年金支給日。この日だけが、田中さんの生活にわずかな光を灯す日です。

 

夫に先立たれ、子どももいない田中さんの収入は、わずかな遺族年金と、自身の基礎年金を合わせて月10万円ほど。そこから、築40年・木造アパートの家賃や光熱・通信費を払い、残ったお金で食費や日常生活品を賄います。「服は、ここ何年も買っていないね。もったいないから」という田中さん。月10万円以内で何とかやりくりする日々を過ごしていました。

 

しかし、状況は日に日に苦しくなっていきます。物価が大きく上昇し始めてから、買い物のたびにモノを手に取るのを躊躇することが多くなり、食費を切り詰める日々が始まりました。

 

「以前は、ご飯にみそ汁に、おかずが2品にお漬物。でもおかず2品は難しくなって、1品にするようになったの」

 

さらに昨夏からのコメの高騰が直撃。これまで5キロ2,000以下で買うことのできたコメが、倍の値段でも買うことができなくなり、ご飯を我慢する日も増えていったといいます。

 

「昔は、ご飯だけでも食べられたら何とか生きていけると思っていたけれど、最近はコメさえ買えない。もう貧乏人はどうしたらいいのか……」

 

今年の3月、備蓄米の放出に希望を見出しましたが、いつまで経ってもスーパーには備蓄米は並ばず――「あまりに売っていないから、夢でも見たのかと疑っちゃいました」と田中さんは笑います。

 

【米(コシヒカリを除く)の価格推移】

2024年6月:2,483円

2024年7月:2,602円

2024年8月:2,772円

2024年9月:3,152円

2024年10月:3,792円

2024年11月:3,843円

2024年12月:3,868円

2025年1月:4,051円

2025年2月:4,239円

2025年3月:4,557円

2025年4月:4,654円

2025年5月:4,769円

出所:総務省統計局『小売物価統計調査(動向編)』東京都区部小売価格。うるち米(単一原料米、「コシヒカリ」以外)