家族のために働き、実家の親に仕送りをする――それはごく自然な親孝行の形と考える人も少なくないでしょう。しかし、その「親孝行」が思わぬ形で裏切られたとしたら、どう感じるでしょうか?
月収50万円・48歳サラリーマン、実家の母に仕送りすること25年「ふざけるな!」と大激怒!久々の帰省で発覚した「親子の絆を揺るがす真実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

アポなしで実家に帰省したが…目を疑う光景が

「実家を出て、大学も出させてもらった以上、親の面倒を見るのは当然だ」

 

田中さんはそう自分に言い聞かせ、時には自身のレジャーや趣味を我慢してでも、仕送りを優先してきました。友人との飲み会を断ったり、欲しかったものを諦めたりすることも日常茶飯事。年々、住宅ローンに子どもの教育費と、家計がひっ迫するなか、田中さん自身、我慢に我慢を重ね、「これも親のためだ」と割り切ってきたのです。

 

しかし、そんな田中さんの親孝行が、ある日突然、激しい怒りに変わる出来事が起こります。それは、久々の実家への帰省でした。地元で同窓会が行われるため、田中さんだけがゴールデンウィークを利用して帰ってきたのです。当初は実家には立ち寄らず、そのまま帰る予定でしたが、「せっかく来たのだから」とアポなしで実家へ。玄関を開けると、そこには想像もしない光景が広がっていたのです。

 

リビングには最新型の大型テレビが鎮座し、壁には人気アイドルグループのポスターが所狭しと貼られています。リビングのテーブルに無造作に置かれた大量のCDやBlu-ray、イベントのチケットの半券……そんななか、母親はスマホを片手にアイドルのライブ映像に夢中になっていました。

 

田中さんの突然の訪問にバツの悪そうな母親。「今、ちょうどXX(アイドルグループ名)のライブ見てたところなの……」。田中さんの怒りは頂点に達しました。

 

「母さん、これ、どういうこと? 説明をしてくれ!」

 

田中さんの問いに、母親は観念したように「最近ハマっていて。ライブは楽しいし、グッズも可愛くて……」。老後のたのしみとしての推し活。夢中になれることがあるのは結構なこと。しかし、楽しむための源泉は田中さんからの仕送りであることは、母親から聞いている年金額などから明らかです。田中さんの25年間の献身が、音を立てて崩壊。怒りを通り越し、田中さんの口からは「ふざけるな!」という言葉が飛び出ました。

 

「私も“推し”を否定するわけではありません。活力のもとでしょうから、ハマっていただいて大いに結構。ただ騙すような形で、私から仕送りを受け取っていたとなると話は別です」

 

ソニー生命保険株式会社が全国のシニア(50歳~79歳)の男女に対し行った『シニアの生活意識調査2024』によると、「現在の楽しみ」として最も多く挙がったのが「旅行」(45.3%)。「テレビ・ドラマ」(39.9%)、「グルメ」(28.1%)、「映画」(25.9%)、「読書」(22.3%)、「スポーツ」(20.8%)、「音楽・楽器」(20.7%)と続きます。田中さんの母親のように、「推しとしてのアイドル」はかなりの少数派のようではあります。ただかつての韓流ブームのように、シニア女性が熱狂していたのを鑑みると、高齢者となった親に“推し”がいてもなんら不思議なことではありません。

 

母親の「推し活」が発覚したことで、親子の絆が揺らぐ事態に。話し合いの末、定期的な仕送りはいったんストップすることにしたといいます。ただ田中さん、今回の件には反省しなければいけないこともあるとか。

 

「困っている母親にお金を渡せばいいという安直な考えがあったことは否定しません。日ごろからしっかりとコミュニケーションをとっていれば、こんなことには起きなかったかもしれない」

 

一方で、思わぬ副産物も。母親が推していたアイドルは実は田中さんの娘の推し。自宅に帰ったあと「おばあちゃんもXXが好きなんだって」と伝えたところ、今度、一緒にライブ参戦しようと盛り上がったのだとか。祖母と孫の関係を深める、いいきっかけになったといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』

ソニー生命保険株式会社『シニアの生活意識調査2024』