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見逃せない「負債」の実態…住宅ローンの重さが家計を圧迫
次に注目すべきは「負債」の側面です。報告書によると、2024年の二人以上の世帯における1世帯あたりの平均負債現在高は663万円で、前年から8万円(1.2%)増えました。勤労者世帯では、平均負債が1,024万円となっており、前年より1.5%の増加となっています。
このような数字を見ると、負債の存在が家計にどの程度の影響を与えているのかが気になるところです。負債のなかでも特に大きな割合を占めているのが、住宅や土地取得にかかる借入金。これは全体の約92.3%を占め、平均で612万円となっています。住宅ローンを組んでいる家庭にとっては、この返済が長期にわたって家計に重くのしかかるわけです。
さらに、負債の分布を見ると、負債保有世帯のうち、平均663万円を下回る世帯が55.3%と過半数を占めています。一方で、負債が1,000万円を超える家庭も少なくなく、ここでも大きな格差が見られます。
また、世帯主の年齢別に見ると、興味深い傾向があります。50歳未満の世帯では、負債の方が貯蓄を上回る「負債超過」となっており、とくに40代では負債保有率が69%と最も高くなっています。これは、ちょうど住宅を購入したり、子どもの教育費がかさむタイミングと一致しており、多くの家庭が「将来のための支出」によって資産形成が追いつかない状況にあることを示しているといえるでしょう。
反対に、60歳以上の世帯になると、貯蓄が負債を大きく上回る「貯蓄超過」の状態となっており、とくに60〜69歳の世帯では、純貯蓄額が2,389万円と最も多くなっています。退職金や年金受給などが背景にあると考えられます。
貯蓄「2,000万円時代」の落とし穴…平均で語れない家計のリアル
「老後資金2,000万円問題」が話題となったのは数年前ですが、今回の平均貯蓄額が1,984万円となったことで、「ようやく到達した」と感じた人もいるかもしれません。しかし、この数字はあくまで「平均」であり、実際に2,000万円以上を保有している世帯はごく一部に過ぎません。中央値が1,189万円であることからも、多くの家庭ではそのラインには遠く及んでいないというのが実態です。
また、貯蓄があっても、それ以上に負債が多ければ、純資産は思うほど多くありません。家計の実力を測るには、「貯蓄-負債」という視点が欠かせないのです。
将来的な不安やインフレを考慮すれば、手元に十分な資金を蓄えておきたいという意識は高まって当然です。しかし、同時に、投資や教育など、成長につながる支出をどう計画的に行っていくかも重要な課題。現代の家計には、「守り」と「攻め」のバランス感覚がより一層求められていると言えるでしょう。