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高齢化で増える「遠距離介護」…将来の資産形成に影響も
厚生労働省の「令和4年 国民生活基礎調査」によると、別居する家族が介護に携わる場合、男性で最も多い年代は60代で43.7%。続いて50代が41.4%。定年前後に親の介護問題が勃発する、というパターンが多数を占めるなか、40歳未満はわずか1.8%。達也さんのように、30代で別居する家族を介護するケースは珍しい部類に入ります。
30代といえば、会社の中核として活躍する年齢。管理職になる人も、ちらほらと出始めるタイミングで、まさに働き盛りというとき。一方で、仕事と介護の両立に迫られる人は珍しく、だからこそ、実践するのはかなり難しいことだといえるでしょう。
さらに達也さんは遠距離介護。「二重生活」のコストが問題になります。東京での生活、そして勝利さんの住む実家での生活。そして往復の交通費。そこに年金では賄いきれない介護費用。出費はかさむばかりです。
「家も買ったばかりですし、これからはがむしゃらに働いて、給与を上げて、できるだけ早くローンも返し終えたい。でも今のままでは実現は不可能。そればかりか、買ったばかりの家も売らないといけないかもしれない。でも本当に売ったなら、父は『自分のせいだ』と責めるでしょうし。本当に八方塞がりです」
そう語る達也さんの表情は疲弊しきっています。ふと「助けて……」と口にしていることもあるとか。限界に近いことはわかっているといいます。
高齢化が進むなか、子どもに負担はかけまいと、施設への入居を選択する人は増加傾向にあります。一方で本音では「自宅にいたい」という人も多いようです。そんな想いに応えようと、家族だけで頑張りすぎるケースも少なくないのです。
また今は60歳前後で親の介護問題に直面するパターンが多数を占めていますが、晩婚化により、今後はその年齢が低下していくことが予想されます。つまり働き盛りで介護問題に直面するケースが増えていくわけです。そうなると、達也さんのように収入ダウンやキャリアの停滞は避けられず、資産形成にも大きな影響を及ぼすでしょう。
どのように親の介護問題を乗り越えていくか――社会全体のさらなるサポートが必要かもしれません。
[参考資料]
厚生労働省の「令和4年 国民生活基礎調査」