「時間分散効果」を最大化するには
積立投資を行ううえで、しばしば話題になるのが「積立の頻度」です。多くの投資家は毎月積み立てを行っているとされますが、証券会社によっては毎日積立が可能なところもあり、また人によってはもっと間隔を空けて積み立てるスタイルを取っている場合もあります。
原則に立ち返ると、前述のとおり、積立投資という行為そのものにリスク低減効果やリターン向上の期待はほとんどありません。そのため、積立の頻度については、実際のところ「どれでも構わない」といってよいでしょう。
ただし、先ほどのスープの比喩を思い出していただくと、味が薄まらないようにするには、収入のタイミングに合わせて積立の間隔を設定するのが自然です。そう考えると、多くの人にとっては「毎月」がもっとも無理のない選択になるはずです。
一方で、「一時的にスープの味が少し濃くなっても構わない」と思える方には、さらに別の方法もあります。
本連載の前回の記事でご紹介したとおり、統計的に見ると、積立投資よりも一括投資のほうが、真の意味での「時間分散効果」を得やすいという傾向があります(一般的に使用されている「時間分散」とは意味が異なるので、違和感を覚えた読者の方はぜひ前回の記事をご覧いただけると嬉しいです)。
この特性を踏まえると、同じ金額を定期的に投資するよりも、できるだけ早く・大きくリスクを取ったほうがパフォーマンスの面では有利になりやすい、という考え方ができます。
これをNISAの制度に応用するなら、「ボーナス積立」を活用する方法があります。NISAのつみたて投資枠は、「あらかじめ設定した定時・定額の買付」が基本ルールですが、例外も用意されており、そのひとつがボーナス積立です。
これは、毎月一定額を積み立てる設定をしたうえで、ボーナス月に限って追加で大きな金額を投資できるという仕組みです(なお、年間の全額をボーナス月だけに投資するという設定は認められていません)。
この仕組みを活用すれば、たとえばNISAの年間枠がリセットされる年始に照準をあわせて、より多くの資金を投入することが可能になります。NISAをフルに活用したいという方にとって、有効な選択肢のひとつといえるでしょう。
ボーナス積立を利用しない方法としては、積立の頻度を「毎月」ではなく「半年に1回」とする戦略も考えられます。たとえば、1月と7月の年2回だけ積み立てを行うという方法です。
これは、つみたて投資枠のルールである「年2回以上の積立」という最低条件を満たしつつ、より大きな金額をなるべく早く投資することで、時間分散の効果を引き出そうとする戦略です。
ただし、ボーナス積立にしても積立頻度を年2回にする方法にしても、注意しておきたいのは、いずれも一時的に「スープの味が濃くなる」状態を生む可能性があるという点です。数ヵ月のうちに自動的にバランスが整っていくとはいえ、心理的なリスク許容度の低い投資家にはこのような戦略はおすすめしません。
なおここまで「NISAを使い倒すには、なるべくつみたて投資枠を活用するべきだ」と述べてきましたが、これは決して「成長投資枠は使うべきでない」という意味ではありません。誤解のないように補足しておきたいと思います。
つみたて投資枠と成長投資枠の両方を活用できる立場にあるなら、基本的にはつみたて投資枠を優先すべき、というのが本稿の主張です。
十分な投資資金があり、すでに課税口座などで追加の投資も行っているようなケースであれば、つみたて投資枠の年間上限を超える部分については、成長投資枠を積極的に活用するのが合理的です。
