
金持ちでも「資産ゼロ世帯」の実態
河合夫妻のような「高所得そうに見えるが、実際には貯蓄がない世帯」は、決して珍しい存在ではありません。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』によると、60代の世帯主がいる世帯のうち、約20.2%が「金融資産を保有していない」と回答。さらに、年収1,200万円以上の高収入層であっても、約9.8%が「貯蓄なし」と答えています。つまり、見た目には余裕のある生活をしているように見えても、突発的な収入減に対する備えがまったくできていない世帯が意外に多いのです。
河合夫妻のように、「会社からの役員報酬があるから」「夫の会社は何社もあるから」という理由で日々の支出を正当化してしまい、リスクヘッジを怠ると、たとえタワーマンションの高層階に住んでいても、生活の崩壊はあっという間に訪れます。特に河合さんの場合、家計管理は基本的にすべて夫任せ。河合さんは日々、夫からもらったファミリーカードを使い買い物。どれだけの収入があるか分からないため、どれだけ使っていいかも分からなかったといいます。
株式会社スマートバンク/ワンバンクが20代から60代の既婚男女を対象に行った『世代別の夫婦の家計管理に関する調査』によると、家計管理における夫婦の分担として最も多いのは「夫婦共同」で30.2%。「妻が中心、夫も少し関与」が24.7%、「妻が中心、夫は無関与」が23.6%、「夫が中心、妻も少し関与」が11.3%、「夫が中心、妻は無関心」は10.3%。また60代夫婦に限ると、「夫が中心、妻は無関与」は9.3%でした。
河合さん夫婦は家賃50万円のタワマンから、東京・私鉄沿線、最寄り駅から10分、家賃9万8,000円の賃貸マンションに引っ越し。そこで再起を図っているといいます。
「どれくらいの収入があって、どれくらいお金を使っても大丈夫なのかさえ分かっていなかったなんて……調子に乗っていましたね。いつでも着飾って、悠々と振舞っていた自分が恥ずかしいです」
引き続き、家計の管理は夫がしつつ、きちんと収支の把握に努めているという河合さん。しかし、お気に入りのバーキンはそのままだといいます。
「これらのバッグは資産だから。きちんときれいにしていたら、高く売れると聞きますし。本当に苦しくなったら手放すときが来るかもしれませんが、そうならないように、夫と共に頑張ります」
収入と支出のバランスが崩れると、お金持ちであっても一気に生活が破綻してしまう――当たり前のようで、意外と多いパターン。反面教師にしてしっかりと家計管理に努めていきたいものです。
[参考資料]
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』