
引退後の人生は「想定外」の連続だった
「まさか、自分が生活保護の申請窓口に行くことになるとは思いませんでした」
東京都内に暮らす永井守さん(仮名・74歳)。最盛期には従業員10名ほどを数える会社の代表取締役として、地域に根差した事業を展開してきました。年商1億円を超える時期もあったとか。しかし昨今は、コロナ禍や人件費高騰、顧客ニーズの変化などが重なり、赤字が膨れ上がり会社を畳むことを決断しました。ただ今は「決断が遅すぎた」と後悔しているといいます。
「赤字がこんなにも膨れ上がる前に会社を辞めるべきだった。そうしたら、老後のためのお金も少しは残っていただろうよ」
自営業のため、年金は基礎年金のみ(令和7年度、満額受給で69,308円)。一括で受け取った共済金は、ほぼすべて負債の返済に消えたといいます。唯一の救いは持ち家だったこと。
「月7万円でも、家賃がなければ何とか生きていけるだろうと思っていたのですが……」
実際に生活してみると、月7万円で賄うことは到底できず、いかにそれまでがどんぶり勘定だったことを思い知らされたといいます。
【単身高齢者の1ヵ月の支出】
消費支出:15万4,601円
(内訳)
食料:4万2,973円
住居:1万3,677円
光熱・水道:1万4,528円
家具・家事用品:6,735円
被服及び履物:3,656円
保健医療:9,102円
交通・通信:1万5,984円
教養娯楽:1万6,311円
その他の消費支出:3万1,624円
※出所:総務省『家計調査 家計収支編 2023年』