資産形成や投資が常識とされる時代。中高年世代にとって、その影響はもはや自分ごとにとどまりません。ときに子の決断ひとつで、親の老後設計までもが大きく変わってしまうこともあるようです。
お前のせいで人生が滅茶苦茶だ!「月収80万円」59歳の営業部長、愛妻と描く穏やかなリタイア生活崩壊…原因は「年収1,000万円超え」の30歳エリート息子 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金は十分だったはずなのに…息子の「ある言葉」で崩れた人生設計

「60歳で退職して、夫婦でゆっくりと過ごそう」。大学卒業後に就職したメーカーで40年弱働いてきた樋口聡さん(仮名・当時59歳)。定年を控えた現在、営業部の部長として忙しい毎日を過ごしていました。来年には定年。そこでいったん仕事人としてのキャリアは終了させ、夫婦と共にセカンドライフをスタートさせる計画だったのです。

 

定年前、現在の月収は80万円ほど。住宅ローンも完済済み。企業型確定拠出年金の積立も順調で、退職金は2,500万円を見込んでいました。人生は順風満帆……に見えました。ところが、ひとり息子の翔太さん(仮名・当時30歳)のある告白をきっかけに、その生活設計は音を立てて崩れていきます。

 

翔太さんは進学校から一流私大に進学。現在はコンサルティング会社に勤務し、年収はすでに1,000万円を超え、エリート街道を歩んできた人。親としてもキャリアの面ではまったく心配はしていなかったといいます。

 

しかし、エリートの世界には一般の人とは違う社会が広がっているようです。翔太さんのまわりには、暗号資産や新興国投資、スタートアップ株などで大きく資産を増やした、いわゆる“億り人”となった同世代が多くいました。彼らの成功談を聞くうちに、「自分は乗り遅れているのではないか」という不安に駆られ、気がつけば、レバレッジをかけたFX(外国為替証拠金取引)や先物取引にのめり込んでいったといいます。

 

「最初は少額で利益が出ていたようですが、すぐに金額が大きくなり、最後は追証の請求。最終的に年収に近い損失を出してしまい、もう自分では返せないと……」

 

翔太さんが助けを求めてきたとき、樋口さんは言葉を失ったといいます。