人生100年時代、年金支給開始年齢の引き上げも現実味を帯びる中、50代は「あと20年は現役」という意識を持つことが不可欠です。では、仕事を楽しむ人はいかにして「生き生きとした老後」を掴み、そうでない人はなぜ「終わりのない停滞」に陥るのでしょうか? 本記事では、保坂隆氏の著書『精神科医が教える 50代からの心おだやかな暮らし方』(有隣堂)より、老後を決定づける50代の働き方について解説します。
華やかなキャリアを積むも、定年退職日は形式的な送別会と花束だけ。サラリーマン人生終焉の「60代男性」が会社から丁重に宣告された「残酷な現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

50代受難の時代、あと20年は現役

年金事情の厳しさから考えても、将来的には年金の支給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性が高いでしょう。50代は、あと20年近くは現役で活躍する、活躍できるという意識を持つことが大切なのです。当然、70歳まで今の会社で勤めるつもりはないという人もいるでしょう。

 

しかし、50代からの働き方、時間の過ごし方が、これから先の人生に大きく影響するのは間違いありません。今までの延長線上に新しい役割が見つかる場合もあるでしょうし、将来起業するにせよ、再就職するにせよ、自分自身の棚卸をして、「肩書」でなく経験に基づいた「自分の強み」を見極めなければ、上手くいく可能性は低いといえるでしょう。

 

また、今の職場でしっかりした人間関係を築いておくことも大切です。人は人によって生かされるものです。ネットで手に入る情報も大切ですが、人の縁によってもたらされる「生きた情報」は何ものにも代えられません。

 

こんな話を聞きました。キャリアはあるのに、やる気も周囲への思いやりもないまま定年までを過ごした人の話です。社内に気心知れた友人もおらず、退職日は形式だけの送別会があり、これまた形式だけの花束を手にひっそりと会社員人生に幕をおろしたそうです。ちなみに本人は雇用延長を望んだそうですが、丁重に断られたといいます。

 

一方で、人の縁を大切にして、しっかりと人間関係を構築していた人もいます。彼の場合は会社から雇用延長を打診されるも、「これまでのキャリアを活かしてやりたい仕事がある」と辞退したそうです。すると、その話を聞いた職場の後輩の口利きで、やりたかったビジネススクールの講師になることに成功、定年前よりも、さらに生き生きと働いているそうです。

 

歳を重ねると、過去の栄光が忘れられず、プライドだけが肥大しがちです。そんな落とし穴にはまることなく、歳を重ねたからこその「しなやかさ」「おおらかさ」で人との縁を紡いでいってほしいと思います。

 

 

保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック
院長

 

※本記事は『精神科医が教える 50代からの心おだやかな暮らし方』(有隣堂)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。