若年層のキャッシュレス主義が浸透する一方で、いまだ現金主義が根強いシニア層。現金主義の場合、出先でお金が足りなくなることへの不安から、必要分より多めに財布へお金を入れているという人も多いでしょう。しかし、持ち歩く現金が増えるほどに、不必要な支出も増えやすくなります。本記事では、保坂隆氏の著書『精神科医が教える 50代からの心おだやかな暮らし方』(有隣堂)より、現金主義のシニア層向け散財対策を紹介します。
退職金には手をつけない。年金だけで暮らせます…69歳・現金主義の女性、財布の中には「5000円」だけでも不安がない理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

メインバンクを決めて、現金主義を推す理由

「今さらメインバンクなんて」と笑わないでいただきたいと思います。銀行やゆうちょ銀行の通帳を一度、整理してみようということです。

 

いろいろな理由から、いくつかの銀行に口座を持っている人もいるでしょう。それらを整理して、銀行に一つ、ゆうちょ銀行に一つの口座にし、証券会社と取引があるなら、それも一つにまとめておくのがいいと思います。

 

人生、何が起こるかわかりません。自分が亡くなった後の相続なども見据えて、取引のある銀行や証券会社などの金融機関はできるだけシンプルにしておくほうがいいと思います。銀行を一つに絞り込めば、老後資金の定期預金を1ヵ所にまとめることにもなります。いろいろな事情で銀行に融資を申し込むときにも、1ヵ所にまとめたほうが残高が大きくなり、いろいろな事情でローンを組む際に審査に通りやすくなるというメリットもあります。

 

そして、「資産の一覧表」も作っておきましょう。預金通帳の銀行・支店名と口座番号、生命保険の証券番号などと、それらの保管場所も書いておく。定期預金の満期日などもここに書き込む。投資信託や株なども含め、老後資金の総枠を正確に把握しておきたいものです。

 

投資信託や株など価格が変動するものは、年に1、2回見直し、最新の数字に書き換えておくと、現況を正確に把握できることになります。

 

年に1、2回、老後資金の全容をチェックすることは、自分の老後の足元を見直すことにも通じます。びくびく縮こまって暮らさなくてもいいんじゃないかと思う人もいれば、もう少し締めていこうと自分に言い聞かせる人もいるでしょう。自分のお金の中間決算になりますし、将来お金が足りなくなるなどという事態に陥らないためにも大切なことです。日本のキャッシュレス決済比率は4割にも満たないそうです(2023年)。クレジットカードの利用もできるだけやめたほうがいいです。

 

現金主義の一方で、お財布がふくらむほどの現金は持たない

この結果は、全年齢を対象にしたものですが、私のまわりの人に聞いてみると、若い人の多くは、現金はあまり持ち歩かず、ほとんどカードなどキャッシュレス決済ですまし、一方、年齢が高いほど、カード等は滅多に使わず、不安がない程度の現金をいつも持ち歩いているという人が多数でした。

 

私には、この「不安がない程度の現金をいつも持ち歩いている」という答えがひっかかりました。なぜなら、お財布がふくらんでいると気が大きくなって、たとえばおごらなくていい場面でも「ご心配なく、今日は私にまかせて」などと請求書を取り上げてしまうことがあるからです。

 

ちなみに、「おごる」という行為は、ある意味、「自分のほうが優位にある」という優越感情を確認するための行為ともいえます。30代、40代でなら後輩におごるということもあったでしょうが、最前線から一歩退ひいている人も多いであろう50代になっても、このような行為をするのは、ただの見栄ではないでしょうか。しかもお金というのは貯めるには時間がかかりますが、使うのはあっという間です。だから、おごり癖は早めに直しておくにかぎります。