定年後に孤立したり、金銭面で苦労しないために、サラリーマン人生の終わりが見えてきた50代の時点でなにができるでしょうか。本記事では、保坂隆氏の著書『精神科医が教える 50代からの心おだやかな暮らし方』(有隣堂)より、定年後への備え方について解説します。
「退職後の老けこんだ元上司を見ると気持ちが沈む」「自分の行く末を見るようで、いたたまれない」…50代サラリーマン驚愕、優秀だった元上司の“まさかの定年後” (※写真はイメージです/PIXTA)

50代を迎えたら…

自信のある、なしを問わず、50代を迎えたらぜひ試してみてほしいことがあります。それは一足先に定年を迎えた先輩たちの生活ぶりを見たり、体験談を聞くことです。

 

今年57歳になるCさんは、それを実践して、定年後にキャリア難民になるリスクをかなり減らすことができたと話していました。5年前に退職した元上司は、現役時代はなかなかの実力者でした。退職金でしばらくのんびり心身を休めたのち、今は現役時代のキャリアを活かして、同業他社の営業顧問をしています。

 

定年前に聞いた「元上司からの予想外の話」

じつはけっこうな自信を持っていたCさん。彼も定年後は長年培ってきた人脈や営業力を活かして元上司と同じような仕事をしようと考えているため、上司に話を聞きに行くことにしました。ですが、そこで元上司の口から、予想外の話を聞かされることになったそうです。

 

「どういう形であれ、定年後もそれまでのキャリアを活かして働きたいのなら、自分の専門性や強みを言語化できるようにしておいた方がいい。会社の名刺も肩書もなくなるのだから『営業成績は常に上位でした』では何も伝わらず、紹介や声がけにもつながりにくい。それで自分は苦労した。最初の顧問契約をもらうまで1年近くかかったからね。とにかく『自分は他の人と比べてここが違う、ここに強みがある』という自身の希少価値をひと言で言えるようにしておきなさい」

 

肩書や会社の名刺に頼らずにすむよう自分を磨いていくのは、口で言うほど簡単ではありません。「いや、自分磨きはしっかりやっている。会社の肩書なしでも大丈夫」という人も、実際に定年後、「こんなはずでは……」となることは大いにあり得ます。ですが、それも先輩の体験談として本人の口から直接聞けば、考えの甘さに気づくことができます。

 

Cさんは有意義なアドバイスを聞けたわけですが、逆に反面教師にできるような話を聞くケースもあるでしょう。でもそれも大きな教訓になるわけです。定年を迎えた人生の先輩から直接話を聞く意義は大きいのです。

 

残念なことに、定年まで勤め上げた人が、人生の大先輩と尊敬されたのは昔のこと。最近は「定年退職して老けこんだ先輩を見ると気持ちが沈む」「自分の行く末を見るようで、いたたまれない」などと言って、退職した先輩や元上司に会ったり挨拶に行くのを敬遠する人が増えています。

 

しかし、やがて自分もその先輩の年齢になるのは避けられない事実です。そのときになって孤立したり、金銭面で苦労したりしたくはありませんね。そのためにも、先輩の経験談をいろいろ聞くのは意味のある行為です。50代を過ぎたら、できるだけたくさんの先輩を訪ねて現状を聞いて回ることをおすすめします。

 

 

保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック
院長

 

※本記事は『精神科医が教える 50代からの心おだやかな暮らし方』(有隣堂)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。