(※写真はイメージです/PIXTA)
50代でまったく違う世界に飛び込む
ここではさらに、50代になってからそれまでの環境から“卒業”して、新たな天職を手に入れた人たちの例を3つ紹介します。
早期退職後、国家資格を取得
50代からの再出発で夢を実現した地元の信用金庫に勤めていたWさんは、50代にさしかかったころ、希望退職者の募集に応じて、早々に新しい人生を歩み始めました。
希望退職者には、退職金の大幅な上乗せなど優遇条件が用意されている場合がほとんど。その告知を見た彼は、これを機に自営業へ転身し、自分の裁量で仕事を展開してみようと決心します。幸い、一人娘はもう社会人。しかも妻も仕事を持っているので、当面、生活の心配はなさそうです。
そうして自営の道として選んだのは、はり師・きゅう師両方の資格が必要な鍼灸師です。いずれも国家資格なので、まず受験資格を取得するには、専門学校に3年以上通って卒業しなければなりません。専門学校では、人体の解剖学から生理学、衛生学なども勉強する必要がありますが、退職して時間がたっぷりある彼の場合、予習復習の時間も十分に取ることができました。そればかりか、関連する領域にまで学習範囲を広げて勉強するという熱の入れようでした。
希望退職のシステムを利用すると、早期のうちからセカンドライフのために、経済的な面だけでなく、じっくりと学ぶ時間を確保できるのも大きなメリットといえそうです。
最近は現代医学でも、東洋医学のはり・きゅうを取り入れるようになっていて、欧米などの病院や介護施設から求人があったりもします。それを耳にした彼は、「いずれは海外で鍼灸師として仕事をするのが、セカンドライフの夢」と新たに英会話の勉強まで始めたというのですから、かなりの行動力です。
夢を持ち、その実現に向けて努力し続ける――ひたむきさの尊さを教えてくれる事例です。
重度のペットロスを経て
好きなことと今の仕事の組み合わせで未来が描けた仕事の疲れを癒すためという軽い気持ちで飼い始めた猫を、わが子のように愛するようになった男性がいます。そんな彼は、50代半ばのころに病気で猫を亡くし、軽いうつ状態になりかかりました。
ペットの多くは寿命が十数年。そのため、愛犬や愛猫がいなくなった後、悲しい日々を経験するのは避けられません。その男性も、いつまでも亡くなった“わが子”との思い出にひたっていたため、私は「動物に触れながら、人に役立つ仕事をしたら」とアドバイスしました。「アニマルセラピスト」という、心や体が弱った人が動物との交流を通して、症状の回復を図るための手伝いをする仕事があります。
最近では、高齢者施設や認知症の人のケアに、動物との触れ合いを積極的に取り入れるケースも増えてきていて、このアニマルセラピーの効果は非常に大きいのです。年間で20%前後も病院に行く回数が減ったというデータもあることから、医療費削減のためにも、今後、さらに盛んになると予測されています。
さて、この男性はもともと人事関係の仕事をしていることもあって、自分のキャリアを好きなこと(動物)に活かせそうなアニマルセラピストに興味を持ちます。そして今、仕事の合間を縫って勉強を始めました。
アニマルセラピストは国家資格ではなく、この資格がなければ、動物療法を手伝ってはいけないわけではありません。しかし、単に動物好きというだけでなく、やはりアニマルセラピーに対する知識や技術をしっかり持っていなければ、できない仕事です。民間団体の認定でも、アニマルセラピストの資格を持っていると、仕事先の信用も得やすいのです。
そしてなにより、大好きなものを“学ぶ”ことは、心を前向きにしてくれます。“今の仕事”もアニマルセラピーに役立つこともあって、より前向きに取り組めているといいます。
このように、本業とのシナジーを期待できる起業や転職はおすすめです。