(※写真はイメージです/PIXTA)
営業一筋だった50歳サラリーマン、出世コースから外れて…
ここである男性の話をしたいと思います。仮にAさんとしておきましょう。彼は不動産会社に勤める勤続30年超のベテランです。営業一筋で会社のためにひたすら愚直に、誠実に、勤めてきました。しかし、おとなしく控えめな性格のせいか、役職は課長補佐どまりで、会社にとって都合の良い便利屋のようでもありました。
そして50歳を越えたころ、まったくの畑違いの広報の部署に異動することに。そこは様々な媒体を使った情報発信を担う部署で、メンバーは感度の高い若手が中心であり、全員がAさんより年下という環境です。役職は変わらないものの、当然、部下はいません。そこで行われる業務のほとんどが初めて経験するもので、右も左もわからない、まさに新入社員と同じ状況でした。部内のメンバーたちも、「なんでこんな人がうちの部署に来たんだろう」といった表情です。明らかにAさんは浮いた存在でした。
泥臭い営業の現場しか経験のない人間にとって、見知らぬ横文字が飛び交う新部署はまるで異世界。当初は事務的な雑務くらいしかやることがありませんでした。
しかし、もともと誠実で、長い営業経験から対人スキルの高かったAさんは、精神的に疲弊しているスタッフや、部内のちょっとした人間関係の変化を敏感に察知します。不満のたまったメンバーの話を真摯に聞き、時にメンバー間のいざこざを仲裁し、自身の失敗談も交え人生相談に応じることもあったそうです。
そうこうするうちに彼らの仕事に興味が芽生え、畑違いとはいえ自分でもできることはあるはずと、若いメンバーに教えを請い、少しずつ仕事を覚えていきます。そして部署で運営するWebメディアに自身のブログを立ち上げ、投稿し始めます。内容は「長い営業生活で経験した心あたたまる人情話」です。
30年にわたる人生経験が滲むそのブログは大変好評で、アクセス数は今も伸び続けているそうです。
今までメールとWeb閲覧にしか使っていなかったスマホも、若いメンバーたちに便利な使い方を教わり、ブログの投稿や素材集めなど仕事に活用するだけでなく、スマホを使った新たなサービスの企画を考えるまでに至っているとのこと。最新のトレンドにキャッチアップするのは大変かもしれませんが、歳を重ねたからこそ考えられる古くも新しい企画が出せるはずだと、目は生き生きと輝いていました。