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脳梗塞で倒れた母…お金の管理は兄が行っていたが
築20年の中古マンションに住む、おひとり様の村木久美子さん(仮名・65歳)。将来を見据えると、持ち家のほうがいいだろう判断し、年金をもらう前にキャッシュで購入しました。多くを使ってしまったため、残っている貯蓄はすずめの涙程度だといいます。
「月々の年金は12万円程度。わずかな貯蓄ではあるけど、万一のために使いたくない。値上げばかりで生活は苦しいけど、何とかやっています」
そんななか、久美子さんの支えになっていたのは、老母の貯金2,000万円。
「母から『万一のことがあったら、哲也と分けなさい』と聞いていました。私たちのために残していると」
久美子さんの母親は晩年、脳梗塞を患い長期の入院生活を送っていました。意識がはっきりしている時期もありましたが、実際の金銭管理はすでに難しくなっていました。そこで、唯一のきょうだいである兄・哲也さん(仮名・72歳)が、母の希望もあって通帳やキャッシュカードを預かり、お金を管理をするようになっていました。
久美子さんは「家族だから」と、哲也さんが母のお金の管理をすることに反対もせず、むしろ「長男なんだから、当たり前」と考えていました。また、母の介護には兄もそれなりに関わっていたため、疑う理由もありませんでした。
しかし、母の死後、相続手続きに入ろうとした久美子さんに対し、兄は態度を一変させました。遺言書は残されておらず、当然、兄と久美子さんの二人で法定相続することになります。しかし、「少し整理してから話そう」と兄は話し合いを引き延ばし、そのうち電話にも出なくなり、住んでいたアパートも引き払われていたのです。
「事件に巻き込まれたのでは?」と一瞬頭をよぎりましたが、哲也さんは意思をもって行方をくらましたと感じました。そして「まさか……」と思い、残されていた通帳をもって取引状況を確認するため銀行を訪れると、驚くべき事実が判明したのです。母が亡くなる前に、ほとんどの貯金が引き出されていたのです。