(※写真はイメージです/PIXTA)
認知症の母の介護で週末ごとに帰省していたが…限界
都内メーカーで働いていた田村明さん(仮名・当時55歳)。月収は45万円ほどで、安定した暮らしをしていました。しかし、田村さんの人生は突如として大きな転機を迎えます。田舎の実家でひとり暮らしをしていた母親(当時78歳)が認知症を患い、徐々に日常生活に支障をきたすようになっていたのです。
当初、田村さんは、週末金曜日の夜に実家に帰り、日曜の夜遅くに東京の自宅に戻る生活をしていました。平日は近所の親戚が様子をみていましたが、症状が進行するに従い、「もう無理だよ、明さん」と連絡が入るように。また田村さん自身も、週末ごとに介護に全力投球する生活で休むことができず、やがて限界を迎えます。
「これ以上、仕事と介護を両立させるのは無理だ」
そう判断し、退職を決意。田舎の実家に戻り、母の介護に全振りすることにしました。母は要介護3の認定を受け、日常的なサポートが欠かせない状態。仕事をしない状態でも、介護は辛かったといいます。
「すぐに家を出て行ってしまうので、目が離せない。服を着せるのも、食事をとるのも、風呂に入るのも、すべてひとりではできない。本当に辛かったのは、私のことを亡くなった父親だと思って、名前を呼ぶ――もう私のことなんて分からなくなっているんだと思うと、それだけで辛くなることがありました」
それでも責任感から、最後まで母を支えた田村さん。介護生活は5年に及んだそうです。