長年、家庭を支えてきた専業主婦が、ある日突然、経済的な自立を求められる――女性の社会進出が進んだり、年金分割の制度が整えられたりして、熟年離婚は増加傾向にありますが、結婚や出産を機に仕事を辞めた場合のキャリアの再構築は困難を極めます。
愚かでした…大手企業で働く52歳夫から「生活費月10万円」をもらっていた50歳専業主婦、突然の離婚話に呆然。四半世紀ぶりの就職活動で味わう屈辱 (※写真はイメージです/PIXTA)

25年ぶりの就職活動は「心が折れる」日々の連続

財産分与して、貯金の半分くらいはいただいて――そんな離婚であれば楽だったかもしれません。ただこれまで子どもの教育に十分なお金もかけてきました。住宅ローンもあと10年残っています。離婚話が出たあとに夫が明らかにした貯蓄は、想像以上の少なさでした。

 

さらに共同生活を営むうえで生じた債務は、夫名義であっても妻名義であっても、財産分与では考慮されます。つまり財産分与を主張するならば、住宅ローンもしっかりと負わなければならないということになります。

 

これらのことを鑑みると、この先、離婚条件の話を進めるのとは別に、きちんと仕事に就いたほうがいい――それが美代子さんに突きつけられた現実でした。最初に訪れたのはハローワーク。履歴書の書き方も面接の進め方もわからず、スタッフの助けを借りながらのスタートでした。

 

「働けるのは週何日?」「パソコンはどれくらい使えますか?」――そういった基本的な質問にさえ答えるのが怖く感じたといいます。自分の価値が問われているようで、面接のたびに心がすり減っていきました。

 

再就職先の候補として選んだのは、結婚前にしていた事務職。できれば正社員が希望ではありますが、雇用形態に拘らず応募しようと試みます。しかし「経験者優遇」や「即戦力歓迎」といった求人条件の前に何度も門前払いを受けました。また条件をクリアしていても書類審査にひとつも通らず撃沈。こうした背景には、現実的なハードルの高さがあります。株式会社ビースタイル/しゅふJOB総研による調査によると、結婚・出産後の就職活動は「難しい」と回答したのが92.6%。美代子さんと同じ50代では、90.6%が就職活動に難しさを感じています。

 

仕事をしていたのは四半世紀前のこと。キャリアと呼べるようなものは、限りなくゼロに近いものがありました。面接でも「鈴本さんは何ができるんですか?」と聞かれるたびに自信をなくし、「私はこれまで何をやってきたんだろう――」と、25年の結婚生活を悔やんだといいます。

 

鈴本さんのように、仕事から四半世紀も離れていなくても、結婚・出産後を機に退職すると、復帰が難しくなるというのが現実。将来的に離婚という結末を迎えるかどうかは誰もわかりませんが、リスクヘッジは考えておいたほうがよさそうです。

 

ちなみに鈴本さんは、事務職での就職は諦め、家事代行のアルバイトをスタート。月収は15万~18万円程度。生活は厳しいとはいいますが、新たな一歩を踏み出しています。

 

[参考資料]

厚生労働省『人口動態』

株式会社ビースタイル/しゅふJOB総研『結婚・出産後の就職活動について、女性はどう感じているのか?「難しい」 92.6%|就活が難しい理由「両立できる仕事少ない」78.1%』