(※写真はイメージです/PIXTA)
25年ぶりの就職活動は「心が折れる」日々の連続
財産分与して、貯金の半分くらいはいただいて――そんな離婚であれば楽だったかもしれません。ただこれまで子どもの教育に十分なお金もかけてきました。住宅ローンもあと10年残っています。離婚話が出たあとに夫が明らかにした貯蓄は、想像以上の少なさでした。
さらに共同生活を営むうえで生じた債務は、夫名義であっても妻名義であっても、財産分与では考慮されます。つまり財産分与を主張するならば、住宅ローンもしっかりと負わなければならないということになります。
これらのことを鑑みると、この先、離婚条件の話を進めるのとは別に、きちんと仕事に就いたほうがいい――それが美代子さんに突きつけられた現実でした。最初に訪れたのはハローワーク。履歴書の書き方も面接の進め方もわからず、スタッフの助けを借りながらのスタートでした。
「働けるのは週何日?」「パソコンはどれくらい使えますか?」――そういった基本的な質問にさえ答えるのが怖く感じたといいます。自分の価値が問われているようで、面接のたびに心がすり減っていきました。
再就職先の候補として選んだのは、結婚前にしていた事務職。できれば正社員が希望ではありますが、雇用形態に拘らず応募しようと試みます。しかし「経験者優遇」や「即戦力歓迎」といった求人条件の前に何度も門前払いを受けました。また条件をクリアしていても書類審査にひとつも通らず撃沈。こうした背景には、現実的なハードルの高さがあります。株式会社ビースタイル/しゅふJOB総研による調査によると、結婚・出産後の就職活動は「難しい」と回答したのが92.6%。美代子さんと同じ50代では、90.6%が就職活動に難しさを感じています。
仕事をしていたのは四半世紀前のこと。キャリアと呼べるようなものは、限りなくゼロに近いものがありました。面接でも「鈴本さんは何ができるんですか?」と聞かれるたびに自信をなくし、「私はこれまで何をやってきたんだろう――」と、25年の結婚生活を悔やんだといいます。
鈴本さんのように、仕事から四半世紀も離れていなくても、結婚・出産後を機に退職すると、復帰が難しくなるというのが現実。将来的に離婚という結末を迎えるかどうかは誰もわかりませんが、リスクヘッジは考えておいたほうがよさそうです。
ちなみに鈴本さんは、事務職での就職は諦め、家事代行のアルバイトをスタート。月収は15万~18万円程度。生活は厳しいとはいいますが、新たな一歩を踏み出しています。
[参考資料]
厚生労働省『人口動態』
株式会社ビースタイル/しゅふJOB総研『結婚・出産後の就職活動について、女性はどう感じているのか?「難しい」 92.6%|就活が難しい理由「両立できる仕事少ない」78.1%』