退職金や預貯金に安心し、仕事を辞めたその先に待っているのは、本当に自由な老後なのでしょうか。安定した老後資金といわれる数千万円も、判断を誤れば一瞬で消えかねないのが現実です。
人生最大のミスでした…「退職金2,300万円」「貯金3,000万円」がゼロ同然に。「もう働かなくてもいいよね」と60歳で仕事を辞めた独身・元公務員男性、わずか6ヵ月で直面した想像を超える悲劇 (※写真はイメージです/PIXTA)

悠々自適な生活から転落劇…きっかけは1本の電話

「もう働かなくてもいいや」。清水聡さん(仮名・63歳)は3年前、60歳で公務員を定年退職。退職金として2,300万円、さらにそれまでにコツコツと貯めてきた預貯金が3,000万円。合わせて5,000万円を超えるお金がある。これだけあれば、よほど散財しなければ、今後の人生で働く必要はないだろうと楽観的に考えていたといいます。

 

史跡などをみるのが趣味だという清水さん。仕事を辞めたら、趣味に時間を使い、色々なところに旅行にでも行こう――そんな悠々自適なセカンドライフを夢見ていたのです。

 

そんな清水さんの元に、一本の電話がかかってきたのは、退職からわずか数ヵ月後のこと。「退職金をお持ちの皆様に向けた、資産運用のご提案です」という営業電話でした。最初は断るつもりだった清水さんでしたが、担当者の熱心な説明に次第に心を動かされていきました。「満室稼働中のアパートで、利回りも高く、安定した家賃収入が見込めます」という言葉が、彼の心に響いたのです。

 

何度かの面談を経て、清水さんはその投資用アパートの購入を決断しました。価格は4,500万円。手元に十分な現金があったため、ローンは組まず、手持ちの資産から一括で購入しました。購入当初は、営業担当者の言葉通り、アパートは満室稼働しており、毎月約45万円の家賃収入が安定してもたらされました。

 

このペースでいけば、10年弱で投資額を回収できる。さらに、将来的に売却すれば、もっと大きな利益が得られるかもしれない――。清水さんは、まるで宝くじにでも当たったかのように、ほくほくと胸を躍らせていました。