長年、家庭を支えてきた専業主婦が、ある日突然、経済的な自立を求められる――女性の社会進出が進んだり、年金分割の制度が整えられたりして、熟年離婚は増加傾向にありますが、結婚や出産を機に仕事を辞めた場合のキャリアの再構築は困難を極めます。
愚かでした…大手企業で働く52歳夫から「生活費月10万円」をもらっていた50歳専業主婦、突然の離婚話に呆然。四半世紀ぶりの就職活動で味わう屈辱 (※写真はイメージです/PIXTA)

突然の離婚宣告…生活費10万円で暮らしてきた50歳主婦が直面した現実

「離婚してほしい」。そう夫に告げられたとき、鈴本美代子さん(仮名・50歳)は一瞬、言葉の意味がわからなかったといいます。結婚してから25年、ずっと専業主婦として家庭を支えてきました。子どもはすでに独立し、今は夫婦ふたりの生活。52歳の夫は大手企業に勤めており、いつも仕事で忙しくしていました。

 

家計を管理していたのは夫。住宅ローンの支払いや、電気光熱費などの引き落とし、子どもの教育費関連など、すべて夫の口座から引き落とされていました。美代子さんには毎月10万円が渡され、そのなかから食費や日用品のほか、自分の衣類や美容代をすべてやりくりしていました。夫がいくら給与をもらっているのか、どれくらい貯金があるのか聞いたこともありません。

 

「夫は真面目な人なので、お金のことはしっかりしてくれている――全面的に信頼していたんです」

 

しかし、夫の言葉で日常は一変しました。「これからは自分の人生を大事にしたい」。そう付け加えられたとき、美代子さんはようやく自分が置かれた立場の不安に気づきます。これまで、何も考えてこなかったのだと。

 

結婚25年目に勃発した離婚話。「熟年離婚」に至るケースは珍しくありません。専業主婦が経済的困難に直面するケースは、近年決して珍しくありません。2023年の熟年離婚の数は約3万9,812組。離婚件数は全体で約18万3,800組なので、離婚する5組に1組は熟年離婚だということになります。

 

結婚して25年、大きな喧嘩もなくやってきたのに、なぜ夫は離婚を切り出したのか――簡単にいえば性格の不一致になるかもしれません。実は結婚当初から「なんか違う」と思い続けてきたという夫。そしてこの先、老後も一緒にいることを想像するのが苦痛だといいます。「これからも一緒にいることはできない」と悟ったといいます。

 

「そこまでいわれては、もう一緒にいられませんよね」