住宅ローンの金利は依然として低く、物件価格が高止まりするなかで、多くの人が「買うべきか、借り続けるべきか」の選択を迫られています。見えるコスト、見えないリスク。暮らしの安心と引き換えに背負うものとは何か——その境界線は、想像以上にあいまいです。
家賃、そんなに払っているんですか?「世帯年収1,000万円」40代夫婦、誠実そうな営業マンの提案を信じて「8,000万円の新築マンション」購入も、3年後に大後悔だったワケ ※写真はイメージです/PIXTA

マイホームは「資産」か「負債」か?家賃との比較で見落とされがちな視点

株式会社マーキュリーによると、分譲された新築マンションの月額平均管理費(60平米換算)は、2014年に1万0,980円だったのが、2023年には1万4,715円と34%も上昇。修繕積立金は2014年に5,373円だったのが、7,243円と、こちらも35%上昇しています。

 

「家賃を払うのがもったいないから家を買う」――この考え方は、多くの人に共通する住宅購入の動機でしょう。株式会社groove agentが東京都に住む30〜40代の独身女性を対象に行った調査によると、住宅購入の理由として最も多かったのが「家賃がもったいない」で3割を占めました。

 

しかし、家を買えば確実に家賃より「得をする」といい切れるわけではありません。住宅ローンの返済はもちろん、固定資産税、管理費、修繕積立金など、持ち家にはさまざまな維持費が発生します。また、長期にわたるローン返済は、転勤や離職といったライフイベントに柔軟に対応することを難しくさせる要因ともなります。とくに都市部においては、住宅価格・維持費の高騰は、家計へのインパクト大。

 

「賃貸であれば、こんなとき(物価高騰)は家賃の安いところへと柔軟に対応できるかもしれませんが、持ち家だと難しいですよね。もう少し、無理なく返済していけるマンションにしておけば」

 

年収1,000万円という一見すると裕福に見える家庭でも、住宅購入が重荷になるケースは少なくありません。山田夫妻も見えなかったコストの大きさを痛感しています。

 

家は資産になる――この言葉の裏には、相場やライフスタイルの変化、メンテナンス負担といった数々のリスクが存在しています。資産価値が将来も維持される保証はなく、売却もすぐにできるわけではありません。「家賃を払っても自分のものにならない」という感情論だけでなく、「本当に自分たちのライフプランに合っているか」といった冷静な視点も不可欠です。

 

[参考資料]

株式会社マーキュリー『新築分譲マンションの管理費、修繕積立金 10年間で約40%上昇。毎月の負担は5,606円増』

株式会社groove agent/ゼロリノベ『30〜40代の独身女性1000人に聞いた、住宅購入の意思や希望、購入したい住宅種別とその理由の調査結果』