
突然の家賃値上げに悲鳴!さらに業績不振で…
東京都内に住んでいた吉田健太さん(仮名・29歳)は、正社員として働いていました。しかしその実態は、月の手取り14万円という低賃金で、日々の暮らしさえ成り立たない状況でした。
大学卒業後、就職活動はうまくいかず、ようやく採用されたのは中小の印刷関連会社。待遇は期待とは大きく異なっていました。基本給は低く、昇給もほとんど見込めない。会社の都合で残業は多く、定時で退勤できる日はほとんどありませんでした。
「正社員になれば安心だと思っていたのに、実際はアルバイトのほうが自由も収入もあるのでは、と思う日もありました」
転職も考えましたが、生活に追われる日々のなかで、転職活動に充てる時間や精神的な余裕はありませんでした。そのまま5年近くが過ぎ、物価だけが着実に上がっていきました。
総務省『家計調査 家計収支編(令和6年)平均』によると、単身世帯の平均生活費(消費支出)は16万9,547円。一方で民間賃貸に暮らすひとり暮らしの場合は18万7,628円で、住居費が生活費の大きな割合を占めることがわかります。また暮らす都市階級別にみていくと、大都市の住居費は小都市・町村に比べて1.6倍。また東京のある関東地方の住居費は、他の地域と比べて1.4~1.9倍。東京のひとり暮らし、家賃負担がどれほど重いか、想像がつきます。
そんななか、人々を襲う物価高騰の波。吉田さんが住んでいたアパートも例外ではありませんでした。
「ある日、大家から『来月から家賃を2万円上げる』と告げられました。築年数の古い物件でしたが、リフォームが入ったことでの値上げでした」
手取り14万円のうち、もともと家賃には6万円を支払っていた吉田さん。8万円ともなると、もはや生活が立ちゆかなくなります。光熱費や通信費、食費を削ったとしても到底足りません。そこに追い打ちをかけたのが、勤務先の突然の業績悪化でした。事業縮小による人員削減。吉田さんも対象でした。次の職が決まっていないまま、家も職も同時に失う事態となってしまいました。