住宅ローンの金利は依然として低く、物件価格が高止まりするなかで、多くの人が「買うべきか、借り続けるべきか」の選択を迫られています。見えるコスト、見えないリスク。暮らしの安心と引き換えに背負うものとは何か——その境界線は、想像以上にあいまいです。
家賃、そんなに払っているんですか?「世帯年収1,000万円」40代夫婦、誠実そうな営業マンの提案を信じて「8,000万円の新築マンション」購入も、3年後に大後悔だったワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「家賃を払うのがもったいない」からの決断が、なぜ後悔に変わったのか

「いつまでも賃貸に住み続けるより、いっそ家を買ったほうがいいのでは」――そう考える人は少なくありません。家賃を払い続けても自分の資産にはならず、老後を見据えても不安が残るため、「持ち家」への憧れを抱くのは自然なことといえるでしょう。

 

東京都内の賃貸マンションに住む山田和也さん(仮名・43歳)と恵美さん(仮名・41歳)夫妻も、まさにそのような思いを持って住宅購入を検討し始めた一組でした。世帯年収は約1,000万円。共働きで比較的安定した収入があり、「今のうちにローンを組めば、将来は楽になる」と考えていたといいます。

 

そんなある日、新築マンションの内覧会で出会った営業マンの言葉が夫妻の背中を押しました。「低金利の今がチャンスですよ」「家賃と同じくらいの支払いで、資産になりますよ」というセールストークに強く惹かれた二人は、8,000万円の新築マンションの購入を決断。頭金として1,000万円を支払い、残りは35年ローンに。

 

月々のローン返済は約18万円、加えて管理費・修繕積立金・固定資産税などを含めると、住居にかかる費用は月22~23万円ほどにのぼります。正直高い買い物だと思いましたが、共働きであれば払い続けていけるだろう――という算段でした。

 

購入当初は「理想の住まいを手に入れた」と満足感を抱いていた夫妻。しかし、3年が経った今、その判断を「早まったかもしれない」と振り返るようになりました。理由は明確でした。ある程度一定だったと思っていた固定費がこの物価高のなかで値上げ。

 

「管理費と修繕積立金が、合わせて月2万円ほど値上げとなりました。私たちのレベルだと、月2万円の出費はだいぶ痛い」

 

さらに、最近では光熱費や食料品など生活必需品の値上げも続いています。それ以上に給与が増えている――そんな実感があるわけでもなく、「この先、ずっとこの負担を続けられるのか?」という不安が日増しに強くなっています。