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学生の間、年金保険料を猶予。そのままだと年金受取額は…
老齢基礎年金を受け取るには、原則として保険料の納付済期間などが10年以上必要です。学生納付特例制度の承認を受けた期間は、この受給資格期間(10年以上)に含まれます。ただし、将来受け取る年金額の計算対象にはなりません。
では、古川さんがこのまま誤解に気づかず、猶予期間分が未納の状態で年金請求を行った場合、どうなるのでしょうか。古川さんが65歳になる20年後を想定し、猶予された3年間分の保険料が未納のままだったケースを考えてみましょう。満額の場合、老齢基礎年金の受取額は月額6万9,308円(令和7年度)です。単純計算で、受け取る年金額に月額約5,200円の差が生じます。1年間で約6万円、10年間で約60万円、20年間で約120万円……。もし保険料を満額納付したつもりでいた場合、月5,000円強の差でも「何かの間違いでは……」と唖然とするのではないでしょうか。
もちろん、「たった5,000円程度」と考えるか、「5,000円も!」と考えるかは人それぞれ。しかし、「何とかならないのか」と考えても、学生納付特例制度で猶予された保険料を追納できるのは、原則として猶予期間から10年以内です。つまり、45歳の古川さんの場合、20代前半の猶予期間からはすでに10年以上経過しているため、追納はできません。ちなみに、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、経過期間に応じた加算額が上乗せされるので注意が必要です。
「もう手遅れか……」
もし満額に近づけたいのであれば、60歳以降に国民年金に任意加入するという方法もあります。これは、60歳以降も国民年金保険料を納めることができる制度で、納付期間が40年に満たない場合などに利用できます。ただし、任意加入して満額受給を目指すことが経済的に有利かどうかは、個々の状況や価値観によって判断が分かれます。加入を検討する際は、事前にしっかりと試算することをおすすめします。
古川さんは、「今のところ(任意加入で)満額受給に近づけたい」と考えつつも、最終的な結論は「そのとき(60歳)になってから考える」としています。いずれにせよ、年金を受け取る段階になって初めてこの事実に気づく、という事態を避けられたのは幸いだったと話します。
このように、「制度の詳細は知らないまま、年金保険料はきちんと納めているつもり」という人は少なくありません。働き盛りの40代こそ、自身の納付状況や年金制度の概要を今一度確認すべき時期といえるかもしれません。
[参考資料]
厚生労働省『令和7年度の年金額改定について』
日本年金機構『ねんきん定期便』
日本年金機構『学生納付特例制度』