
「ねんきん定期便」から見えてきた思い込み
毎年、誕生月に届く「ねんきん定期便」。自身の年金見込み額を知ることができ、老後の生活設計の参考になります。しかし、そこで違和感を覚える人もいます。会社員の古川翔太さん(仮名・45歳)もその一人です。
「ねんきん定期便」でよくある違和感の一つが年金額です。記載されている金額を見て「これしか受け取れないの?」とパニックになる人も多いといいます。ただ、それは年齢によって記載内容が異なることを知っていれば、過度に心配する必要はありません。「ねんきん定期便」は、大きく50歳未満と50歳以上で記載内容が異なります。
50歳未満の場合、「これまでの加入実績に応じた年金額」が記されています。これは、「今後保険料を納めなかった場合に受け取れる金額」を示しています。そのため、金額の少なさに驚いてしまう人が少なくありません。一方、50歳以上の場合、記載されているのは、現在の加入状況が60歳まで続いたと仮定した場合の年金見込み額です。こちらの方が、将来実際に受け取る金額に近いと考えられます。ただし、今後の収入が大きく変動すれば、記載されている見込み額との差は大きくなる可能性があります。
しかし、古川さんが覚えた違和感は金額ではありませんでした。
「あれ、保険料が未払いになっている」
昨年の誕生日時点で、未納がなければ納付実績は24年(=288ヵ月)と記載されるはずが、実際には3年弱(約36ヵ月)短かったそうです。そして古川さんは、このとき初めて「年金ルール」の詳細を知ることになります。
そもそも日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金に加入しなければならず、その保険料は月額1万7,510円です(令和7年度)。ただし、学生には申請によって保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」があり、多くの学生が利用しています。この制度は平成12年(2000年)4月に始まりました。古川さんは20歳のとき、すぐにこの制度を利用し、保険料の納付猶予を受けました。
しかし、これはあくまで「猶予」であり、「学生の間は収入が少ないため納付を待ちますが、社会人になって収入が得られるようになったら納めてください」という意味合いです。ところが、「学生の間は保険料を払わなくてよく、納付したものとみなされる」と誤解している人も少なくありません。
「20代の頃は、年金なんてよくわかっていなかったし、制度について詳しく知ろうとも思いませんでした。国民年金と厚生年金の違いがわかったのも、つい最近のことです。今になって当時の記録が“効いている”とわかって、ようやくその重要性に気づきました」