親が自ら選んだ老人ホームに入居し、穏やかな日々を送っている。年金もあり、預貯金もある。子としては何も心配することはないでしょう。しかし、ふとしたきっかけでその前提が揺らぎはじめることも。高齢の親を持つ世代にとって他人事ではない、そんな「見えづらい変化」が、今、静かに進行しています。
思わず二度見しました。「年金月20万円」お金の心配はない80歳の父だったが、52歳長男が絶句する「驚愕の老人ホーム請求額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

口座を管理していた長男。ある日、異変に気付いた

「ひとり暮らしはしんどいから、老人ホームに入ることにしたよ」

 

新井剛さん(仮名・52歳)が父・稔さん(仮名・80歳)から聞かされたのは、今から3年前のこと。その前年に稔さんの妻は他界。広い戸建てでのひとり暮らしに限界を感じての選択でした。ホームへの入居については、すべて稔さんが段取り。自宅は処分し入居金にあてました。月額費用は23万円で、そこに含まれていない費用含めて、年金が振り込まれる口座から引き落とされるようにしてありました。稔さんの年金は月20万円ほど。毎月5万円ほどが貯金から取り崩されていました。

 

「お金の心配はいらない。90歳までは払っていける余裕がある」

 

そう稔さんから聞かされていた剛さん。そのため特に心配することはなかったといいます。しかし、状況は静かに変化していきました。入居から2年ほどが経過したころ、稔さんに軽度の認知症の兆候が見られるようになりました。生活には支障がないものの、今後を考えると、それまで自身で行っていたお金の管理は家族に任せたほうがいいということに。そこで長男である剛さんが稔さんの口座を管理することになりました。

 

話に聞いていたとおり、多少の上下はあるものの、毎月25万円ほどが引き落とされています。そのような通帳をみたからでしょうか、徐々に引き落とし額を確認しなくなったといいます。

 

「引き落とし額の違いは1万円程度だったので、今月も25万円くらいが引き落とされているんだろうな、と……」

 

しかし、それから1年ほど経ったある日、ふと稔さんから預かっている通帳を記帳しようと思い立ったといいます。そして異変に気付きます。

 

「えっ、30万円も引き落とされている」

 

ある月を境に、引き落とし額が30万円近くにも跳ね上がっていたのです。思わず、二度見した預金通帳。それでも最近の引き落とし額は30万円ほどでした。