
ずっと頑張って働いてきたのに「遺族年金が少ない」ことへの違和感
夫婦そろって長く働いてきた共働きだった松井実さん(68歳・仮名)と久美子さん(仮名・66歳)。実さんは定年後も65歳まで現役で働き、月17万円の年金を受け取っていました。それから2年後、久美子さんも65歳まで仕事を続け引退し、月16万円の年金を受け取るようになりました。夫婦合わせて年金月33万円、手取り月27万円ほど。年金だけでも十分に悠々自適な生活を送れる水準でした。夫婦で築いた老後資金に大きな不安はなく、「これからは穏やかに暮らしていこう」と話していた矢先、突然、実さんが事故で急逝しました。
突然のことで、ただ悲しみに暮れる日々。その後に襲ってきたのは何ともいえない空虚感でした。夫との老後が当たり前に続いていくと思っていたわけですから当然です。そんなときに「こんなことではいけない」と思わせてくれる人がいたといいます。
3年前に久美子さんと同じようにパートナーを亡くした友人。その人は、「友だちと呼ぶには少し抵抗がある」という歯切れの悪い言い方をする人で、結婚と同時に仕事を辞め、趣味や習い事に忙しい日々を送っていました。久美子さんとはまったく異なる生活を送っており、キラキラとした私生活を何かと自慢する姿にうんざりしていたといいます。パートナーが亡くなったあとも、毎月のように旅行に行くなど趣味を満喫。「うちは主人がちゃんと稼いでくれていたから助かっているのよ」と微笑むその言葉に、久美子さんは言葉を失ったことがあったといいます。
そんな彼女から「きちんと年金の手続きを済ませておいたほうがいい」とアドバイスを受けたのです。
「私は月10万円くらい、遺族年金をもらっている。あるのとないのとでは全然違うから、きちんとしておいたほうがいいわよ」
意外にもまともなアドバイスに驚いたという久美子さん。そこで年金事務所に手続きをしに訪れました。しかしそこで聞いたおおよその金額に愕然。「私だって、真面目に働いてきたのに」――心のなかで、悔しそうにつぶやくのも無理はありません。