高齢者の老後資金に影を落とす「親から子への仕送り」。子どもが成人しても自立せず、親が支援を続ける家庭はごく一部にとどまるものの、長期化することで親の生活を深刻に圧迫するケースも少なくありません。背景には、就職氷河期に直面した子世代の不安定な雇用や、親の側の情による判断の先送りがあります。
愚かでした…〈年金月20万円〉78歳の元地方公務員の父が、働かない50歳息子に30年続ける「仕送り月10万円」に後悔する日々 (※写真はイメージです/PIXTA)

就職氷河期、「一時的な支援」のつもりだった

「情けない話ですが、ずっと仕送りをやめられずにいます」

 

元地方公務員の岩崎昭さん(仮名・78歳)。月20万円の年金で暮らす岩崎さんが今なお続けているのは、息子・直樹さん(仮名・50歳)への仕送りです。

 

「仕送り」といえば、大学生の子を持つ親の話かと思いきや、実態はまったく異なります。自分自身が老後を迎えた今もなお、息子を金銭的に支えるという現実に、岩崎さんは「自分が愚かだった」と肩を落とします。

 

直樹さんは、いわゆる「就職氷河期世代」に該当します。地方から進学のために上京し、大学を卒業したのは1997年のことです。新卒採用が絞られていた時期で、直樹さんも例にもれず、内定を得られないまま卒業しました。

 

「本人も焦っていたと思います。とにかくどこかに潜り込もうと必死でしたが、なかなかうまくいかなかった。卒業してからも短期のアルバイトや派遣を繰り返し、安定した職に就けなかったんです」

 

大学時代から仕送りをしていた岩崎さん夫婦は、「卒業後もしばらくは」と仕送りを継続。しばらくすれば正社員として働き、やがて自立するだろう——そう考えていたといいます。

 

しかし、その「一時的な支援」は予想以上に長引きました。正社員の口は見つからず、非正規雇用も年齢とともに減っていき、気づけば「職を探す」ことそのものへの意欲もなくなってしまったといいます。

 

「何度も『もう支援は難しい』『働いてほしい』とは伝えましたが、『今さら何をすればいいのかわからない』という反応。本人にその気がないと、こちらがどれだけ言っても難しいですね」

 

3年前に妻を亡くし、現在は自宅でひとり暮らしをしている昭さん。年金月20万円から、毎月10万円を直樹さんに仕送りしています。

 

何度か田舎に帰ってこいと言ったものの、大した職歴があるわけでもなく、帰ってきてもあるのはアルバイト。それであれば、東京でひとり暮らしを続けるのと変わらない——結局、今に至ります。