仕事中心の生活がひと段落し、「夫婦ふたりの時間」を見つめ直す時期を迎える60歳前後。多くの男性が「ようやく自由な生活を」と語る一方で、女性が抱える本音は少し異なるようです。定年後の暮らしに潜む、夫婦の見えない温度差が、思わぬすれ違いを引き起こすことも。
老後の夢を語る〈月収120万円〉59歳・大手企業部長の夫、「いいわね」とニッコリ微笑む58歳妻。その翌日に起きた「まさかの出来事」に夫、呆然「う、嘘だろ」

思いもよらない定年後のオファー。真剣にこれからを考えた

大手企業で部長職を務め、順調なキャリアを築いてきた59歳の村田学さん(仮名)。月収は約120万円。家庭では子どもたちも独立し、妻・久美子さん(仮名・58歳)と二人暮らし。退職まであと1年を切ったあたりで、人事部から今後のことについて面談がありました。

 

学さんの勤めている会社では、原則、社員は60歳で定年退職。再雇用を希望すれば、契約社員として働き続けることができます。しかし、正社員から契約社員へと雇用形態が変わり、また定年前の役職はなくなるため、給与は半減、減額幅の大きい人では7割近くも減ることも珍しくありませんでした。

 

学さん自身のこれまでのキャリアを高く評価したうえでの特別なオファー。サラリーマンとして大変光栄なことでした。ただ、思い描いていた定年後の生活が大きく変わってしまいます。

 

「ようやく家族との時間を持てると思っていたけど……きちんと定年後の生活を考えないといけないな」

 

ある晩、夕食を囲みながら「定年後は田舎にでも引っ越してゆっくりと過ごそう」と、少し照れながら老後の夢を口にしました。久美子さんは「いいわね」と微笑んだといいますが、様子がどこかよそよそしくなったといいます。

 

そして翌日、久美子さんから「しばらく実家に帰る」「しばらく今後のことについて考えたい」とLINEのメッセージが入りました。「いいねと笑っていたのに……うっ、嘘だろ」と唖然とする学さん。結婚して30年が経ちますが、久美子さんが今、どのような心境にいるのか、まったく見当がつかなかったといいます。