
「月7万円」でやりくりするも、不安は増すばかり
元同級生夫婦だという小野田信二さん(仮名・66歳)、和子さん(仮名・66歳)。夫婦で飲食店を営んでいました。
毎朝、仕込みのために信二さんが早く家を出て、和子さんは家事を済ませてから2時間ほど遅れて店に到着というのがお決まりのパターン。しかしある日、そのルーティンが崩れました。和子さんがお店に着くと、信二さんが倒れていたのです。救急搬送されましたが手遅れ。和子さんは、現実感のないまま葬儀や手続きに追われました。まだまだ元気と思っていた矢先の急逝でした。ふたりで支え合って過ごしてきた日々は、突然終わりを迎えたのです。
信二さんがつくる料理あってこその店だったため、1週間ほどの休業を経て閉店を決意。
「40年以上も、夫婦二人三脚でやってきたので、心のなかにぽっかり大きな穴が開いてしまって」
何もやる気が起きない日々が続きましたが、徐々に将来不安が大きくなっていきました。店の売上がなくなったことで、生活費は年金のみ。和子さんが受け取れるのは、自身の基礎年金と、飲食店を開業する前に少しの間会社員をやっていたので、わずかな厚生年金。合わせて7万円ほどです。信二さんは会社員経験がないので、厚生年金はなし。そのため和子さんは遺族年金を受け取ることができませんでした。
節約を心がけ、足りない分は貯金を取り崩す。年金月7万円で、何とかやっていけたものの、「この家に住み続けられるのかと考えると……絶望に近い感情を抱きました」と和子さんは語ります。持ち家の暮らしは家賃こそ不要ですが維持費は少なくありません。築40年以上が経過した住宅では、あちこちの傷みが目立ち始め、給湯器や屋根の補修、水回りの劣化など、見過ごせない不具合が積み重なっていました。
さらに年に1度の固定資産税がのしかかります。小野田さんの家では、毎年15万円前後が課税されていました。年金だけでは生きていくのも厳しいなか、さらに固定資産税を毎年払っていくとなると……。
「貯金を取り崩せば、しばらくはなんとかなると思っていました。でもそれを修繕費や税金に回していたら、5年、10年先にはこの家を手放すことになるかもしれない」