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十分な預貯金や退職金、年金。それで十分だと思ったが…
60歳で定年を迎えたのち、再雇用で契約社員として65歳まで働いた安藤浩之さん(仮名・65歳)。長いサラリーマン生活に終止符を打ち、年金生活をスタートさせました。
年金は月19万円程度。定年時には退職金2,400万円を受け取っています。子どもが生まれてからは専業主婦として家計をやりくりしてくれた妻・浩子さん(仮名・60歳)は、老後を見据えて積立貯金をしてくれているはずです。これらのお金を使って、第二の人生を妻とともに楽しむつもりでした。
「とりあえず、ゆっくり旅行にでも行かないか」
現役時代は長期の休みが取りにくく、旅行に出かけるといっても1泊2日の温泉旅行程度。どうせなら新婚旅行以来の海外へ……そんな提案をしようと思っていましたが、浩子さんの反応は想像していなかったものでした。
「そんなお金、どこにあるの?」
浩之さんは、狐につままれたような気持ちでした。退職金、2,400万円だぞ。年金も月19万円ももらえるんだぞ。貯金だってあるだろう。少しくらい贅沢するお金くらい、余裕だろう。次から次へと、言葉が出てきますが、浩子さんは冷静に「あなたの年金じゃ足りないのよ」と一刀両断。浩之さんは、あえなく撃沈となりました。
総務省『家計調査 家計収支編(2025年平均)』によると、ともに65歳以上の夫婦のみの世帯の1ヵ月の支出は25万9,877円。確かに、月19万円、手取りにすると月16万~17万円程度の年金では、夫婦2人の生活は少し難しそうです。ただ浩子さんも年金をもらうようになったら……「あと5年もあるのよ。それまで貯金が減っていくのをただずっと見ていられる? 不測の事態が起きたらどうしようと不安にならない?」と浩子さん。ごもっともです。