四十九日を終えた妻が、九州へ「戻った」理由
IT関連企業に勤務する中間管理職だった横山学さん(仮名/43歳)。月収58万円と、平均を超える給与で、妻の愛さん(仮名/41歳)と小学生の娘の3人で、東京都内の賃貸マンションに暮らしていました。愛さんは専業主婦として、家事と育児を一手に担い、家族の生活を支えていました。
しかし、突然の悲劇が一家を襲います。学さんが自宅で倒れ、そのまま病院で亡くなったのです。死因は心筋梗塞でした。持病はなく、健康診断でも目立った異常はなかったため、家族にとって大きな衝撃でした。
深い悲しみと動揺の中、愛さんは葬儀と四十九日法要を無事に終えました。その後、彼女は娘を連れて自身の出身地である九州へ戻るという決断をします。義母である裕子さん(仮名/68歳)にとって、それは予想外の出来事でした。彼女は理由を聞く間もなく、愛さんが法要の翌週に引っ越してしまったことに驚きを隠せません。
なぜ、愛さんはそのような決断をしたのでしょうか。実は、学さんの急逝後、葬儀の準備や手続きで、愛さんは裕子さんと幾度となく意見が衝突していました。葬儀の進行、親族との連絡、香典の取りまとめなど、あらゆる場面で裕子さんが中心となり、愛さんは「これも義母が決めるのか」という思いを抱えながら、次第に精神的な疲れを感じていたのです。
思い返せば、裕子さんは常に家事や子育てに口を出していました。学さんは、そんな義母から愛さんを守る「防波堤」のような存在だったのです。その学さんがもういない……。そう考えると、夫亡き後の生活は大きな不安でしかありませんでした。愛さんは、再出発するためには新しい環境が必要だと考え、実家に戻ることを決めたのです。