夫婦であれば、必ず、パートナーとの別れが訪れます。そのような「万一の場合」に備えておく必要がありますが、自営業の場合、備えが不十分というケースが多いのが実情です。
あんなに働いてきたのに、何だったんだろう…夫婦で年金15万円だったが、68歳夫が闘病死。年金事務所窓口の「遺族年金への回答」に66歳妻が絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

不十分な自営業者の公的保障…遺族はどう生きていけばいいのか?

そのようなとき、「遺族年金は?」と知人のひとりが聞いてきました。「私は夫が亡くなってから、月に8万円くらいの遺族年金をもらっている」といいます。

 

由美子さんは、遺族年金という言葉を聞いたことはありましたが、何のことか、まったくわかりません。ただ、同じように夫を亡くした知人がもらえているのだから、自分ももらえるのだろう、という気持ちで年金事務所に行きました。しかし、当然ながら、「遺族年金を受け取る資格はありません」と告げられます。遺族年金を受け取れると考えていた由美子さんは言葉を失います。

 

遺族年金は大きく、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった人に生計を維持されていた遺族が受け取ることができます。

 

遺族基礎年金は、国民年金に加入している人が亡くなった際、受給要件を満たしていれば、「子のある配偶者」、または「子」が受け取ることができます。国民年金は日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満であれば、みな加入しているので、「遺族年金は誰もがもらえる」と思いがちです。しかし、前述のように「子」の要件があるため、基本的に遺族基礎年金が受け取れるのは、“子育て中”に限ると考えておくべきでしょう。

 

一方、遺族厚生年金は、一定条件を満たしている厚生年金加入者が亡くなった場合、受給要件を満たしている対象者であれば受け取ることができます。子の要件はありません。

 

自営業者が年金に加入する際、厚生年金のような保障はないため、国民年金のみで老後を支えることになります。それは遺族に対しても同様です。厚生年金分の保険料を払っていないので、当然といえば当然ですが、自営業者の場合、死亡により遺族が受けられる公的保障は限定的と考え、備えておく必要があります。

 

――あんなに身を粉にして働いてきたのは何だったんだろう

 

そのような年金制度だから、といってしまえばそれまでです。自営業者は年金だけに頼ることができない現実があるため、老後の生活設計をどうするかが大きな課題となります。遺族年金が受け取れない場合、生活費はどうやって確保するのか、医療費はどう賄うのか、年金に頼らずに生きていくためにはどんな準備が必要なのか……早い段階からの準備が不可欠です。

 

[参考資料]

日本年金機構『遺族年金の制度』

生命保険文化センター『2022年 生活保障に関する調査』