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「三大疾病保障特約付き・団体信用生命保険」の意外な落とし穴
免除対象外のケースが多い
保障内容の説明書である「契約概要」を詳しくみてみると、住宅ローンが免除となる条件としては死亡・所定の高度障害状態・悪性新生物(ガン)・急性心筋梗塞・脳卒中が挙げられています。
このなかで「急性心筋梗塞」と「脳卒中」には特に注意しましょう。心疾患のうち、急性心筋梗塞の患者が占める割合はほんの一部です。脳卒中についても脳血管疾患のうち、金融機関が定義する「脳卒中」とは、くも膜下出血、脳内出血、その他の非外傷性頭蓋内出血、脳梗塞を指します。それ以外の脳血管疾患は適用外です。
急性心筋梗塞以外の心疾患や脳卒中以外の脳血管疾患でも、その後の労働に制限が加わることが多いのが現実です。職種によっては、山本さんのように収入が減ったり、今後の見通しが大きく悪化したり、なかには失業につながったりするケースもあります。そのようななかでも三大疾病保障付き・団体信用生命保険では、すべての心疾患・脳血管疾患が対象となるわけではないのです。これまでどおりの生活が送れない状況となっても住宅ローンは免除されません。
当然、金融機関や保険会社が意図的に誤解を与えているわけではありません。しかし、この落とし穴を明確に説明してくれる住宅営業担当者は決して多くはないでしょう。一方で、ローンを組む当人が自力で理解するのは非常に難しいのが現状です。
借り換え時のリスク
また将来、金利の上昇などによって住宅ローンを借り換えたいと思った場合にも、予期せぬ問題が発生する可能性があります。そもそも団体信用生命保険は生命保険です。そのため、加入条件は「所定の健康状態であること」が必須となります。過去に病気がなく、健康でなければ加入できません。
三大疾病保障付き・団体信用生命保険は、加入できる健康状態の条件が厳しく、中高年世代では加入ができないケースも多いです。借り入れ当初の若いころは健康で加入できたとしても、40~50代になったときに借り換えを検討した際、そのとき健康状態が悪化していれば、同条件での借り換えができないという事態も十分に考えられます。
住宅ローンを組む際には、こうしたリスクを踏まえたうえで検討すべきでしょう。保障が足りない場合には民間の生命保険に加入するなど、適切な対策を講じることが重要です。