住宅ローンを組む際、強制加入となる団体信用生命保険。団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りる際に金融機関で加入する生命保険の一種です。債務者が死亡した場合、金融機関が保険会社から死亡保険金を受け取り、住宅ローンが完済される仕組みとなっています。近年では、ローン返済免除の対象が死亡時だけでなく、ガンなどの三大疾病にまで拡大された商品も増えてきていますが、思わぬ落とし穴もあるようで……。
なにかの間違いでは?…月収95万円の52歳大企業部長、心不全を発症も…「三大疾病保障付き・団体信用生命保険」でローン免除ならず愕然 (※写真はイメージです/PIXTA)

不幸中の幸い…?

専業主婦である妻に収入が下がるかもしれないことを伝えると、「これから住宅ローンはどうするの?」と不安な顔をされました。

 

今後、収入が減少する可能性を考えると、妻が返済を心配するのも無理はないでしょう。山本さんは37歳のときに6,600万円の住宅ローンを組んでいます。15年が経過し、住宅ローンの残債は約4,500万円。毎月の返済額は約25万円です(ボーナス払い別)。山本さんはあることを思い出し、妻に話しました。

 

「確か、うちの団体信用生命保険は三大疾病保障付きにしていたはずだ。心疾患になれば、住宅ローンの残債はゼロになるはずだよ」

 

山本さんが加入していた団体信用生命保険は「三大疾病保障特約付き」でした。「心疾患だからうちの住宅ローンはゼロになるよ。収入は減るわ、手術するわで最悪な状況だけれど、これだけは救いだな」妻と安心して笑い合いました。

 

――ところが、金融機関に電話で確認すると、担当者から予想外の言葉が返ってきます。

 

「山本さんの症状は保障の対象外となる可能性があります」

 

「えっ、なにかの間違いではないですか?」山本さんは血の気が引いていくのを感じました。

ローン免除対象外のワケ

山本さんは、契約書類の内容を確認しました。団体信用生命保険の契約概要欄には以下のように記されています。

 

・所定の急性心筋梗塞を発症し、医師の診療を受けた日から60日以上労働の制限が必要な状態が継続した場合
・所定の急性心筋梗塞を発症し、その治療を直接の目的として所定の手術を受けた場合

 

冠状動脈の閉塞または急激な血液供給の減少により、その関連部分の心筋が壊死に陥った疾病であり、原則として以下の3項目を満たす疾病

 

・典型的な胸痛の病歴
・新たに生じた典型的な心電図の梗塞性変化
・心筋細胞逸脱酵素の一時的上昇

 

医師に確認したところ、山本さんは虚血性心疾患による急性心筋梗塞ではないとのことでした。つまり金融機関の回答どおり、住宅ローンは免除されません。山本さんは愕然とせずにはいられませんでした。

 

「住宅ローンは今後の収入増や退職金での繰上げ返済を見込んで組んだのに。ローンはなくならないし、収入は増えるどころか減るなんて……」

 

山本さんの住宅ローンの返済は、収入減と心臓の病気を抱えながら今後も続くことになります。