二世帯住宅にするから同居しない? そんな「安く住める家」へのお誘いは、何かとお金がかかる現役世代にしてみたら喉から手が出るほどの話。しかし本当にお得なのか――表面的な金額の損得を超えて、見落とされがちな落とし穴があるようです。
どうせ俺の金だろ?〈月収42万円・40歳の夫〉の余計なひと言で「二世帯住宅計画」が崩壊寸前。〈月収38万円・38歳の共働き妻〉が突きつけた「義親との同居条件」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「実家に住めば安上がり」は本当か?

市川和也さん(仮名・40歳)と香織さん(38歳)夫婦。保育園に通う2人の男児との4人家族。現在の暮らしに大きな不満はないものの、子どもたちの成長とともに、住環境についての見直しが求められていました。「マイホームを持つなら、長男が小学校に上がる前に――」。そんなとき、夫の実家をリフォームして住むという話が浮上します。

 

もともと、祖母の代から受け継がれてきたこの家は、1階と2階が完全に分離された構造。玄関・風呂・トイレ・キッチンがすべて別で、外階段から出入りが可能です。プライバシーを保ちやすい点が大きな魅力でした。元々2階に住んでいた長男家族が引っ越しをすることになり、市川さん夫婦に声がかかったという経緯です。ただし建物はすでに築40年。住み続けるには大きな修繕が必要です。義親が考えたのは大規模リフォームをしたうえで住み続けるか、建て替えて減築するかの二択。リフォームをするなら、単純に費用は折半で、どこまでこだわるかで変わりますが、500万円~1000万円程度になるだろうといいます。

 

「この立地なら、マンションを買えば6000万円~7000万円はくだらない。リフォームだけで済むなら、教育費にもお金を回せる」──そうした打算も働きました。

 

しかし、さらに問題が持ち上がります。義両親から「家賃として月5万円を支払ってほしい」との要望があったのです。

 

和也さんは「5万円なら安いよ」と気軽に答えましたが、香織さんからすると自分たちの分のリフォーム代を負担したうえで、さらに家賃まで支払うというのは予想外の展開でした。

 

「どうせ、俺の金だし」と和也さん。その発言に違和感を覚えた香織さん。夫婦はともにフルタイムで働いており、現在の年収は和也さんが月収42万円、年収は約700万円、香織さんは月収38万円、年収は約600万円。夫婦は経済的には安定しており、自らがリフォーム代を負担し、月5万円の“家賃”を払うことはたやすいことです。

 

しかも今は和也さんのほうが収入は上。「俺の金」という表現は、百歩譲ったとしても、ともに正社員として忙しく働いています。ところが家事や育児の負担は圧倒的に香織さんのほうが大きく、和也さんに対する不満を募らせていました。

 

株式会社一条工務店が共働きをしている既婚男女に対して行った調査によると、女性の約68%が家事の7割以上を担当しているという結果が出ています。共働きといっても夫婦ごとにバランスはさまざまですが、家事分担に限ると、妻の負担が圧倒的に大きくなっています。