地震大国である日本において、住まいの安全性は最重要課題です。しかし、耐震性に優れた家づくりは、コストや快適性とのバランスが難しいというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、WB工法を取り入れた「コスパ最強&安心な家」の事例とともに、木造住宅ながら長く安心して暮らせる住まいを実現するためのポイントを解説していきます。
地震がきても倒壊せず、コスパのよい「日本の家」とは?…木造、真四角、あとひとつの「超重要・条件」 (※写真はイメージです/PIXTA)

1.南側の大きな窓がエネルギー効率を高める

[図表2]南側の大きな窓がエネルギー効率を高める

 

耐震性の追求と開放的な間取りは両立するもの。リビング・ダイニングに面する南側には大きな窓を設置し、日射熱と採光を効率的に取り込める。ひさしを大きくしているので、夏は必要以上に日射熱が入ってこない。

2.吹き抜けで1階と2階をつなげる

[図表3]吹き抜けで1階と2階をつなげる

 

吹き抜けのメリットは解放感、1階と2階での家族のコミュニケーションの取りやすさがある。また、冷たい空気は下へ、温かい空気は上へ流れる特性を利用し、夏も冬も1台のエアコンの稼働で家全体を適温にできる。

3.ゆるい勾配の屋根で年中、太陽光発電

[図表4]ゆるい勾配の屋根で太陽光発電

 

真四角な家なので屋根をゆるやかな勾配にできる。これにより1年中、一定の太陽熱が得られ、効率的に発電して省エネ性を高める。また、屋根の傾斜が小さい分、外壁の面積も減り、初期費用を抑えられる。

4.ガルバリウム鋼板で性能とデザイン性をUP

[図表5]ガルバリウム鋼板で性能とデザイン性をUP

 

外壁に軽い特性のあるガルバリウム鋼板を縦貼りすることで、より耐久性を高めている。シンプルだからこそ飽きのこないデザインとなり、メンテナンス費用も不要。屋根にも同じ建材を使用。

過去の災害から得た教訓

阪神・淡路大震災後の2000年に新耐震基準が改正されました。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の耐震等級1が最低基準です。

 

その後も日本では大地震が発生し、残念ながら住宅の倒壊がありました。被害報告では新耐震基準以前の木造住宅の倒壊が圧倒的に多く、2016年に発生した熊本地震では、耐震等級3の木造住宅ではほとんどが無被害でした。耐震等級3は消防や警察など防災の拠点となる建物、耐震等級2は病院や学校の耐震性に匹敵します。 

 

また、木造住宅では建築確認の際に構造審査があります。延べ面積500m2以下、2階建て以下などの条件を満たす場合は「4号特例」という制度で省略とされてきましたが、この制度が2025年4月に改正され、現行法で4号に適合していた木造2階建て以下、高さ13m以下、軒高9m以下、延べ面積500m2以下の建築物は、2号または3号に区分され、建築確認手続きが見直されます。

 

さらに、300m2超の建築物は許容応力度計算が義務化されます。これは、建築物の部材に生じる力の計算、地震力によって生じる変形量の計算を合わせたものです。平屋住宅以外は構造審査が必要になると思ってください。 

 

耐震性を高くするためには、当然費用が発生します。しかし、耐震性は最も優先順位が高いと肝に銘じておいてください。私は「家づくりは人生づくり」というコンセプトをもっていますが、人生づくりをするには命が守られなければなりません。ほかの部分で初期費用を抑える工夫がたくさんあります。

 

その際に重要なのがトータルコストでの捉え方です。修繕やメンテナンスのランニングコスト、光熱費を抑えることができれば、トータルコストは抑えられます。また、耐久性を高めることも費用減のポイントで、この耐久性は耐震性を持続させることに大きく関係もしています。WB工法は高い耐震性、耐久性を実現できます。

 

[図表6]耐震等級ごとの特性